第426話 ◆不気味な建物

◆不気味な建物


なに? なんでこんな建物がここに建っているの?


首都や地方都市は計画的に造られているし、建築許可も建築後の検査承認もしっかり行っている。


従って目の前の不気味な気配を漂わせている建物は、当然違法建築物件に間違いない。


でもなぜ、この建物の中にベルちゃんが立ち入ったのだろう。


誰かに拉致されたのか、それともベルちゃんを引き付ける何かがこの家にあるのだろうか。


・・・



遡ること5か月前。


セレネ城で起きたヴァンパイア事件を覚えているだろうか。


サリエルが天使と知らずに首筋に噛みついたチェイスが浄化され灰になったのだが、その灰を袋に詰めてサリエルがどこかに捨てに行っていた。


実はヴァンパイアは生命力が強く、条件によっては時間をかけて復活する場合があるのだ。


そのため、サリエルは自腹で街の外れにあった空き家を購入し、その家の地下室に灰の入った袋を置き封印していた。


しかし、空き家だったせいで地下室には鼠が巣を作っていて、鼠が封印に使ったクロスを袋から外してしまった。


そのため、チェイスが灰になってから間もなかったこともあり、チェイスが復活してしまったのだ。


そして、ヴァンパイアの住処となったその家は、徐々におどろおどろした外観となり、不気味な気配を発するようになっていた。



復活したばかりのチェイスには、まだ元の能力(たいした威力はないが)は戻っていない。


ただし、さすがにヴァンパイアだけのことはあり、その気配によって悪魔に属するサキュバスのベルを引き付けたのだ。


ベルはチェイスに椅子に縛り付けられ、大層な量を吸血されていた。


早く助け出さないと、今度はベルが死んでしまう。


・・・



よし!  あたしは、この家の中を探すから、メイアはお城に戻ってサリエルとコリン君を連れて来てくれる。


OK、セレネ。 つれてくる~


メイア、ルイの真似するのムカつくからやめて!    


OK、セレネ。 わかった~


ダメだこりゃ。



さて、まずは正面切って突入するか。


まずは玄関に続く5段の階段を上り、入口のドアのノブを押す。


すると意外にもドアに鍵はかかっておらず、音もたてずに開いた。


ちょっと、罠っぽいなー。  気を付けないといけないね。


全ての窓の雨戸が閉められているので、部屋の中は真っ暗だ。



あたしは、指先から炎をちょっとだけ出して、辺りをかざして見て行く。


最初の部屋には、テーブルと椅子以外は何もな・・い。


ええっ?  なんで、あたしの肖像画があるの?


壁には、60号サイズの額に入ったあたしの油絵が飾ってある。


なにこれ?  まるで今日、あたしがここに来るのが分かってたっていうの?


近づいてよく見れば、油絵の右下に Sariel とサインが書いてある。


えっ、これってサリエルが描いたの?  でも何でそれがここに?



あたしは、なんだか急に恐怖心でいっぱいになってしまい、家から出ようと出口に急いだ。


すると、奥の部屋から、ガタンッ ガタ ガタ という乾いた音が聞こえて来た。


キャー  怖いーーー


あたしは、いっきに家の外へと駆けだした。




***


セレネさんって意外と怖がりなんですね。


意外ってなによ!  ちょっと失礼じゃないの。


あーー めんどくせー

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