第404話 ◆インキュバス現る

◆インキュバス現る


あたしは、コリン君に言われた事業計画書を作成することにした。


溜まった公務をこなした後、遅めの夕食を取りお風呂に入って一息ついた後、自室に籠ってあれこれ考えながら書いて行く。


パソコンがあれば思いついたことを打ち込んで、後からちゃちゃっと編集し直せばいいのだけれど、この世界にそんなに便利なものは無い。


スマホはあるけど、小さいし入力も編集もかえって面倒くさいのだ。


取り敢えず思いついたことは、どんどん小さなメモ用紙に書き込んでいく。 これをあとでグルーピングしながら纏めて行くのだ。


これはブレストの授業で習った川喜田二郎さん発案のKJ法ってやつだ。



深夜をまわってメモの数も結構溜まったころ、換気のため少しだけ開けておいた窓からサァーっと冷たい風が吹き込んで来た。


勢いがある風で、カーテンがフワッと部屋側に広がる。


風はそのままの勢いで進み、テーブルに広げたメモ用紙を辺り一面に吹き飛ばした。



おああっ  せっかくグルーピングしたのにーー!  もぉ、一からやり直しじゃない!  


あたしは、髪の毛をぐしゃぐしゃしながら、カードを拾い始めた。



ひゃっ


突然背後に凄まじい気配を感じ、全身に鳥肌が立つ。  金縛りにあったように体が固まって、後ろを振り向くことが出来ない。


なに?  やだ、怖い。  こういう時に限ってシルフたちは、あたしのそばにいない。


ってか、作業の邪魔になるから、あたしが追い出したんだけど・・・



うひゃう


今度は首筋に何かが集ったーー!  結構大きいーーー!


もしこれが虫だったら、気絶間違いなしだ。  ってか、気絶しそうなんですけどーーー!



貴様がセレネか?  いきなり耳元で声がする。 


キサマっ!  ←またパクってる


ええーっと 名前は合ってると思いますが、そういうあなたはどちら様でしょう?


我はインキュバス。


インキュバスって・・・ もしかしたら・・・ 睡眠中の女性を襲い悪魔の子を妊娠させるというあのインキュバス?


ほう、よく知っているじゃないか。


そのインキュバスさんが、なんでここに?


そんなことは決まっているじゃないか。  この国を俺様が乗っ取るためさ。


なんですって!


今日は、ほんの挨拶がわりってところだ。  明日からは、ひとりずつ襲ってやるから楽しみにしておくのだな。



がくっ


その声と同時に、金縛りが解けて体が動かせるようになった。


あたしは全身に冷や汗をかいていた。


慌てて、直ぐにみんなの部屋を見て回ったけど、全員異常なしでスヤスヤ眠っていた。


はたしてあれは夢だったのだろうか?


でも、もし本当のことだったら、女の子たちは寝たら襲われてしまう。



次の日の朝、あたしは全員を広間に呼び出し、昨夜のことを話して聞かせたのだった。




さてさて、セレネの周りではいろいろな事が起きて、まったく退屈しませんね。


今回はインキュバスなので、女子たちは悪魔の子を身籠ってしまう危険が・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る