第371話 ◆帰国
◆帰国
セレネ、すまない。 あたしたちも眠らされていた。
わかってるわ。 シルフもブラックもありがとうね。
全部あたしが問題なのに、いつも助けてもらってばかりだね。
セレネ、こいつらどうする?
UFOがあんな状態じゃ、このひとたちは生きていけないと思うんだ。
だから、あたしたちの国へ一緒に連れて帰ろうと思う。
仲間もいるみたいだし、気長に連絡を取る方法を探せばいいんじゃないかな。
でもセレネ、ここからどうやって帰る?
なんだシルフ、忘れちゃったの? アンディの飛行船。
あっ
そう、王都に行けばアンディの会社の支社があるはず。 それにこの国の大きさなら、支社にヴォルルさん1/10がいるかもしれない。
伯爵とかに見つからないか?
ブラックさん大丈夫だよ。
あたしはもう全部思い出したんだ。 あたしは空を飛べるし、この二人くらいなら一緒に浮かせて王都まで連れていけるよ。
UFOの凄まじい爆発で、森の木が広範囲になぎ倒されてしまっていたが、これは仕方がない。
時間をかけて自然に森が再生されるのを待つしかないだろう。
よし! エリージャ伯爵の兵が来る前に出発しよう。
あたしは、しょんぼりしているティアとルイに手を繋がせて、飛行魔法でふわりと空中に浮かんだ。
シルフ王都は、あっちだね?
それでいい。
来たばかりなのに、Uターンさせてごめんね。
大丈夫、気にするな。
こうして、あたしたちはいったん空高くまで上昇すると、一直線に王都を目指した。
ひぃ~ 兄さま、助けて。 足の下に何もないわ。
ティアってば、それは僕だって同じだよ。
途中、バカな双子の兄妹が騒いだがこいつらは無視である。
馬車ではあんなに時間がかかたのに、空を飛んだらあっと言う間についてしまった。
今更ながらに魔法を使えることの凄さを実感する。
この国の王都は人が多くとても賑わっていて、これからの国造りの参考になる。
なので機会があれば、またゆっくり見て回りたい。
アンディの航空会社の支社は直ぐに見つかった。
予想していた通り、ヴォルルさん1/10が支店長をやっていたので、話しが速い。
飛行船による大陸間の移動は大人気となっていて、あたしたちが乗れるのは3日後の朝の便になった。
あの双子が一緒なければ、乗務員枠で直ぐ乗ることができたのだけど仕方がない。
ヴォルルさん1/10にお願いして、3日間ともヴォルルさんの家に泊めてもらうことにした。
これなら、またエリージャ伯爵が何かしようとしても手出しは出来ないので安心だ。
航路は、この国の王都 → まりあ先輩の国 → 葵さんがいる国 → 真ん中の島(ヴォルルさん統治) → セレネ王国 となる。
真ん中の島からセレネ王国までの距離が一番長いので、海上中継基地の数も多くなる。
乗り継ぎは途中3回が必要で、そのたびに2日ほど時間が取られてしまう。
でも、船で帰ろうとすれば、1年以上のところを1ヶ月半ですむのだ。
乗船切符は、ヴォルルさんからお金を借りて3人分を買った。 シルフとブラックは小さいので只なのが助かる。
あたしは、バカの双子に恩を売っておく方がいいと思い、チケット代の借用書を書かせ拇印を押させた。
こちらの世界では、こういう慣習はないのだけれど、宇宙人には分からない。
ただ驚いたのは、ティアもルイにも指紋が無かった。
指紋は指先の触感を増幅したり滑り止めだったりなど、いろいろな役割がある。
これが無いというのは、どういう進化をしてきたのか・・ 果たして高等とか下等の決定的な何かにつながるのか気になる。
まあ、これから一緒に暮らす中で、宇宙人の秘密もいろいろ発見されるだろう。
さて、この空の旅は、なかなか快適だったのだけれど、特に面白い事もなかったので、無事に帰できたことだけ報告しておく。
セレネが、また余計な者を拾って来たので、次回へ続く・・・
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