第365話 ◆エリージャ伯爵の野望

◆エリージャ伯爵の野望


ここはエリージャ伯爵の屋敷である。 


今日はフネットもサステマも朝からエリージャ伯爵様の食事の支度やら10時のお茶の準備など忙しく動き回っていたが、11時を過ぎてようやく休憩時間が取れた。


ねえ、フネット姉さん。  セレネさんの記憶はいつ戻るのかしら?


そうねえ・・ 自分の名前すら憶えてなかったくらいだから時間がかかるでしょうね。  もしかしたら一生あのままかも知れないし。


そんな・・・  それならいっその事セレネさんの国へ手紙を出して、国の人に迎えに来てもらった方が良くはないですか。


でも頭に何か酷いことをされたっていってたし、あまり無理をさせない方がいいとあたしは思うわ。



ふむ、セレネというのは何時ぞやのドラゴン娘のことか・・・ あの娘むすめいまでは一国の女王とも聞いたが・・・


ちょうど休憩中の部屋の前を通りかかったエリージャ伯爵に会話を聞かれているとは知らず、二人はまだ会話を続けている。



でも女王様が長い間、国を不在にしてはまずいのじゃない。  きっと大臣の方たちも困ってらっしゃるでしょう。


そうねえ、それでは帰ったら妖精さんたちに話してみましょう。



そうか、セレネという娘は、フネットの家におるのだな。  これは千載一遇せんざいいちぐうのチャンスではないか。


もしあのセレネを妻に娶れば、このわたしも従兄と同じく国王となれる。


おまけに都合よく記憶を失くしているようだし、さっそくフネットに明日屋敷に連れてくるように申し付けるとしよう。


・・・


姉さん、どうして伯爵様がセレネさんのことを知ってらしたんでしょう?


サステマ、もしかしたら休憩中のあたしたちの会話を伯爵さまに聞かれてしまったのかも知れないわ。


ああ、なんていうことなの。  姉さん、どうしましょう。


明日、セレネさんをお屋敷に連れて行ったら、たいへんな事になりそうであたし怖いわ。


そうね。 前回のこともあるし、ぜったいにセレネさんを正妻にしようとするに違いないわね。


こうなったら、もう夜のうちに逃がしてしまうしかないわ。


でも、いったいどうやって?  例え夜中に逃がしても、そんなに遠くまで行かないうちに連れ戻されてしまうわよ。



サステマ、確かあなたの友達が王都にいたわよね。


ええ、大きいサイズのお店の店長をやっている人がいるわ。  服はいつもそこで買うの。


王都まで逃げられれば、伯爵様の手の者は迂闊に手出しは出来ないはずよ。


わかったわ、姉さん。 店長にセレネさんたちを匿ってもらうよう手紙を書くわ。 


・・・


そして夕食後、セレネたちは王都へとひたすら馬車を走らせていた。


伯爵邸から王都へは一本道なので道を間違えることは無いが、追手がかかった場合は時間との勝負になる。


気付かれる前に王都との間にある橋を渡り切れれば、なんとか逃げきれる可能性が高い。


そして王都まで逃げられてサステマさんの友達を訪ねれば、そこに匿ってもらえるのだ。


だがもしも途中で捕まってしまえば、エリージャ伯爵と結婚させられてしまうかも知れないとフネットさんが言っていた。


あたしだって、好きでもない人と結婚なんてしたくない。


だから、なんとしても逃げきってやる。


セレネは手綱を握りしめ、鞭を強く打った。




確かエリージャ伯爵には正妻がいたはずなんですが、この場合はどんな修羅場になるんでしょうか。


想像したら結構怖いので、次回へ続く・・・

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