第364話 ◆真っ黒なサンタクロース
◆真っ黒なサンタクロース
シルフがその家を見つけたのは、シルフたちが倒れていた場所のすぐ近くだった。
いま、シルフとブラックはその家のすぐ傍の茂みの中に潜んで様子を窺っている。
そう、目の前に建っている家は、セレネを拉致したあの二人の家ではないかと疑っているのだ。
もし、セレネが捕まっているならば、あの時と同じように酷い目に遭っているかも知れない。
気持ちは焦っているが、家の中からはおいしそうな匂いが漂ってくる。
グゥーー 食べ物の匂いをかげば、当然お腹も鳴る。
シルフたちもセレネ同様、ほぼ1日何も食べていない。 すきっ腹にこの匂いはさすがに堪える。
おい、シルフ。 食べ物を奪いに行くか?
いやそれは、みんなが寝てしまってからが安全。
・・・
やがて、家の灯りが消えて、辺りも真っ暗になった。
そろそろ、いいだろ? お腹がペコペコだ。 ブラックが悲痛な顔で訴える。
わかった。 ついて来い。
二人は草や石ころの陰に隠れながら、少しずつ家に近づいて行った。
窓や扉は中から施錠されている。
どこか侵入できる所が無いか手分けして探しているとブラックが、
おい、ここから入れそうだぞ
と屋根から手招きをして来た。
なるほど、煙突からなら台所へ侵入できる。
二人は、まだ少し熱を残している煙突にもぐり込んだ。
が、これが予想外に狭く、羽をひらひらさせると煙突の中の煤すすが舞い上がって息が苦しい。
音を立てるとまずいのは分かっているのだが咽てしまい、ようやっと釜土から這い出たところでゲホゲホと咳の嵐となった。
そこにいるのは誰!
シルフたちの目の前にいきなり大女二人が、壁のように立っている。
ひとりはフライパンを手に持ち、もう一人は大きなお玉を持っている。
絶対絶命だ。 シルフはガックリと肩を落とした。
あら、あなたはセレネさんと一緒にいた妖精さん?
シルフがその声に顔をあげるとそこには見覚えのある女がシルフの顔をしげしげと見ていた。
セレネはどこ?
やっぱりそうだ。 セレネさんはもう2階の部屋でお休みになりましたよ。
それにしてもあなたたち、体中真っ黒よ。
まだ、温かいはずだからお風呂に入ってらっしゃいな。
そうしたら出てくるまでに食事を用意しておいてあげますからね。
その言葉にシルフとブラックは、お風呂にすっとんで行った。
・・・
翌朝、シルフたちは、セレネとフネット、サステマの三人に今までの出来事を話して聞かせた。
フネットとサステマは、すぐに納得したようだったが、セレネは大半の記憶がないため、さすがに半信半疑の状態である。
でも、セレネは自分がシルフたちのことを何となく知っているような気がしていた。
それに、やはり自分が何者であるかを知っている人が傍にいるのは心強いものだ。
そしてセレネはシルフたちに相談して自分の記憶がもう少しハッキリするまで三人をフネットさんたちの家に置いてもらえるよう改めてお願いしたのだった。
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