第360話 ◆体脂肪率
◆体脂肪率
巨大なカジキマグロを釣り上げて、嬉しくてセレネに見せようと思ったメイアが振り返るとそこにセレネがいない。
辺りを見回せば、まさにセレネがUFOの中に飲み込まれる寸前ではないか。
メイアはセレネを助けようと、すぐさまUFO目掛けて飛び立った。
が、セレネを内部に取り込んだUFOのスピードは圧倒的で、セレネを乗せたまま瞬く間に、空の彼方に消え去ってしまった。
船の甲板には釣り上げたカジキマグロだけが、バタバタと暴れている。
メイアは、グォーーーっと大きな声でただ吠えるだけしかできなかった。
・・・
UFOの内部は、真っ暗だった。
あたしは相変わらず空中に浮かんでおり、上下左右がまったく分からない状態だ。
シューーー
壁からミスト状の何かが噴き出して来て、それを吸い込むうちに意識が遠くなっていった。
・・・
いったいどのくらいの時間が経ったのだろうか。
気が付けば診察台のようなものに寝かされている。
手足はしっかり固定されていて、体のあちこちに電極のようなものを付けられている。
部屋の中は薄暗くいろいろな色のライトが点滅している。
あたしは、ひさびさにパニックに陥っていた。
なんとか起き上がろうとするが、手首と足首の先しか動かせない。
声を出したくても酸素マスクのようなもので顔を覆われていて、それは叶わなかった。
気が付けば恐怖のため、涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになっていた。
しばらくすると顔に付けているマスクから、薔薇の香りに似た匂いのミストが出て来て、また意識が遠のいてしまった。
・・・
次に目が覚めると、今度は普通に椅子に座らされて縛られていた。
あっ 気が付いたのね。 気分はどう?
そういきなり話しかけられて声がした方を振り向けば、髪の色が薄いピンクの宇宙人ぽい人が立っていた。
声からすると女性のようだが、体はなんだか着ぐるみみたいだ。
特に気分が悪いとかはないです。
そう、よかった。
あのっ! 人のことを勝手に拉致するのって、酷くないですか! あたしは、ピンクに抗議する!
そうね。 ごめんなさい。 でもね、もしあなたの体のデータを取らせてほしいって言ったら素直に取らせてくれました?
いや、お断りします。
そうでしょ。 だからこうするしかなかったの。
なに正当化しようとしてるんですか。 早くあたしを帰してくださいよ。 今日はおいしい鉄火丼を食べようと思ってたのに!
おい、ティア。 なにを騒いでいるんだ。 データの解析は終わったのか?
兄さま、あと少しよ。 このひとの体脂肪率が27%まで分析できたところなの。
ギャーー なに公表しちゃってるんですか! いまダイエットしてるんだからほっといてください。
目標達成すれば、23%になる予定なんですよ!
プッ さっき食べ物の話しをしていたのに説得力があると思います?
クソーー 宇宙人のくせにーーー そこのあんたも突っ立ってないで、妹の暴言を注意しなさいよ!
ティア、個人情報は漏洩させてはダメだぞ。
わかってるわ。 それより、これ動きづらいから脱いでもいい?
いや、僕たちの正体を明かすわけにはいかないからダメだよ。
もう、暑くて限界!
あ、脱いだ! ←セレネ
どうせ、このひとのIQは110だから、心配しなくても大丈夫よ、兄さま。
なっ! どうせあたしは、バカですよ。 わるかったわね!
みて、兄さま。 この反応よ。
キィーーー くやしぃーー この宇宙人の女、アリシアより生意気よ。
やれやれ、果たしてセレネは無事に帰してもらえるのでしょうかねぇ。 で次回へ続く・・・
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