第352話 ◆世界一周ハネムーン旅行

◆世界一周ハネムーン旅行


アンディが進めていた、この世界初の航空会社がついに就航に漕ぎ付けた。


広い世界の海の中に巨大なフロートを浮かべ中継基地を作り、高速化した飛行船でその間をつなぐ。


従来の船による移動に比べ、十分の一以下という大幅な時間短縮を実現した。


つまり、一年掛かりだった所へも僅か一か月で行けることになる。


これは画期的な出来事だった。


機体の改良やエンジン強化(もにゅぱ~を増やす)などで、さらに時間短縮も期待できる。


もにゅぱ~は、変な声で鳴くのが唯一の欠点だが、雛から育てることで人によく懐き、言う事もよくきく使える奴だ。 


・・・


そして、航空会社の安全性や高速性のデモストレーションとして、アンディとヴォルルさんがハネムーンを兼ねて世界を巡ることになった。


立ち寄る先ごとに会員登録希望者を募り、1区間の往復を無料で体感試乗してもらう。


こうして早期に固定客を確保していくのだ。


顧客の有力候補は、バイヤーだったり旅行好きのお金持ちだったりが多い。


そのほかとしては、各国の外交官や王族、貴族などもターゲットだ。


もしかしたら、エリージャ伯爵と再開できる日がやって来るかもしれない。


・・・



ヴォルルさんは、あたしの第四夫人であるが、アンディの正妻である。


もちろん第四夫人の件は、ヴォルルさんの冗談だったのだけれど。


ヴォルルさんは とにかくアンディにベタ惚れで、飛行船内は熱くて甘~い空気が漂っていたそうだ。


なんでも見える人には、真っ赤な薔薇の花や点滅する無数のハートが船内の至る所に漂って見えたそうだ。


もしかすると、これはヴォルルさんの演出だった可能性もあるなと、あたしは後から思った。



飛行船の中には立派な厨房があり、乗客には豪華な食事が出された。


もちろんヴォルルさんが造ったワインも積み込まれていて、乗客から高評価をもらっていた。


食材もセレネ王国の物を多く使ってもらい、特産物のPRにも一役買っている。



飛行船の航路は、一番需要の高い大陸間を結ぶものから就航させて行く予定らしい。


なので まだ二つ以上遠くの大陸へ行く場合は、乗り継ぎが必要になる。


ヴォルルさんが統治している真ん中の島は、商船の港と同様にハブ空港になるため、ますます発展していくだろう。




そして、最後の立ち寄り先として、セレネ王国へ飛行船がやって来た。


飛行船の機体には、有料で広告をペイントできるのだが、今回はバカップルの似顔絵がでかでかと書かれていて、ちょっと引いた。


でも、ヴォルルさんらしい。


きっとアンディは恥ずかしがっているだろうと思っていたら、真っ先に自慢してきてたので、やっぱり似た者夫婦だ。


ヴォルルさんは、自分の分身であるヴォルルさん1/10と何やらヒソヒソ話していたが、このヒソヒソ話は後日判明する。



アンディは、滞在期間中にコリン君と数日一緒に過ごしていたが、あたしはその間ヴォルルさんが何かしやしないかとドキドキしっぱなしだった。


でも、何事も起こらなかったし、ヴォルルさんは意外に嫉妬深くはないようだ。



あたしとしては、アンディの方がハネムーン中に第二夫人と一緒に過ごすなんて、ちょっと信じられない。


こんなことを自分がされたら、必ずぶっ飛ばすけど・・・



セレネさん、なんだか僕のこと睨んでません?


アンディとコリン君に同時に言われて、自分はそんなに怖い顔で二人を見ていたのかとちょっぴり可笑しくなって笑ってしまった。



二人は一週間ほど滞在して、元来たルートを逆に帰って行った。


これからは、仲間とも頻繁に会えるようになるのが嬉しい。


今度はあたしが、まりあ先輩や葵さんい会いに行ってみよう。



ヴォルルさんのヒソヒソ話しが気になるけど次回へ続いてしまう・・・

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