第353話 ◆女王まりあ
◆女王まりあ
これは、あたしが大先輩のまりあ女王から直接聞いた話しである。
それはまだ、あたしがこっちの世界に来たばかりのころ、モッフルダフの船で新たな大陸を目指している最中に、海龍に襲われ止む無く船の大砲で海龍を仕留めたのが始まりだった。
なんとあたしが大砲で仕留めた海龍は、目的地であったその大陸にある一番大きな国が手厚く保護をしていた国の象徴的な存在であった。
もちろん国旗にも、その海龍の姿が記されている。
あたしは、もしかしたら死刑になるかも知れないと覚悟を決め、その国の王様に謝罪をするため謁見を申し出たのだった。
でも当時は、この若さでしかも異世界では死にたくなかったあたしは、持っていたスマホを献上品として差し出し許してもらおうと必死だった。
なにしろ圏外でもZONY製のスマホである。 江戸時代の将軍様にスマホを見せるのと同じくらいのインパクトがあるに違いない。
これで、なんとか死罪を免れることができるかもとの一途の思いで王様の前に進み出た。
そうしたら、王様は女性だった。 しかも、驚いたことに同じ高校の先輩だったのだ。
その女王は、マーリア・テレイデと名乗った。 これは、本名の伊手真理亜から勝手につけた名前で、本人は結構気に入っていた。
そして、こっちの世界に飛ばされ、あたしと同じ境遇であったにもかかわらず、僅か2年あまりで大国の女王までに何故なれたのかを教えてくれたのだった。
これから、その話しをゆっくりと語って行こうと思う。
・・・
その日、伊手真理亜は授業をさぼって、学校の裏山にある展望台の芝生に寝そべり、うとうとと居眠りをしていた。
途中、頭が何度かクラクラしたが、いつも朝食抜きで学校に来ていたし、少々貧血気味の体質なので気にせずに眠ってしまった。
そして目が覚めるとこちらの世界に飛ばされていたのだそうだ。
最初は夢を見ていると思っていたのだったが、いつまで経っても目覚めないし、お腹も減って途方に暮れていた。
ここまではあたしと全く同じで、まりあ先輩もすごく辛い思いをしたのが分かる。
そして、ここからがあたしとの違うところだけれど、そこに運よく通りかかった魔法使いに助けられ、一緒に旅をすることになったのだそうだ。
この魔法使いは、当時まだ国としての形を成していなかったその土地で、開拓者たちが頻繁に争いを繰り返していたため、そのうち一つの開拓村の用心棒に雇われて、その村へ向かう途中であった。
当然、まりあ先輩もその魔法使いの仲間として迎え入れられた。 まりあ先輩は、合気道部に所属していて県大会でも優勝するなど、そうとうに強かったらしい。 授業はサボるが部活だけは絶対にサボらなかったと自慢気に話していた。
魔法使いに武道家と来たら後は剣術使いと相場は決まっていると まりあ先輩は言って笑ったが、ゲームのやり過ぎではないだろうか。
でも、あたしの仲間になった元傭兵のリアムはクラウ・ソラス(光の剣)の使い手だったけどね。
で、まりあ先輩の仲間にも、剣の達人が加わったのだそうだ。
そして、この3人の活躍で周辺の村はまとまり、やがて町になり更には都市へと大きくなっていった。
ある程度大きくなったころ、もともと雇われの身だった3人は、領主となった元の雇い主から疎まれるようになる。
なぜなら3人の人望や人気が圧倒的に高かったからだ。
そして、お決まりのように領主から一方的に追放される。
それだけなら人の良い3人組は、よその土地へと流れ移っていったのだろうけど、バカな領主は刺客を放ったのだ。
その後は、もう時代劇の水戸〇門とか暴れん坊将〇とか必殺仕〇人のラスト5分を見るかのようだったそうだ。
そうして、まりあ先輩たちは悪い領主に代わってその地を治め、まわりの町や村も自然と合併し、大きな国へと姿を変えていった。
つまり、あまり争わずに国としてまとまって、人々が強い連帯感と絆を持っていたのだ。
そして、あたしはあの時気が付かなかったのだけど、まりあ女王の側近として今も魔法使いと剣の達人がしっかり補佐をしていた。
今度、飛行船に乗って、まりあ先輩に会いに行ったときには、その魔法使いさんと剣の達人さんに紹介してもらおうとあたしは思っている。
まりあ先輩が僅か2年あまりで女王様になれたのは、やはり まりあ先輩の人柄がによるところが一番なのだ。
セレネ、あんたも気をつけなさいよ! とアリシアに言われないようにしようと思う。
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