第318話 ◆もにゅぱ~の生息地

◆もにゅぱ~の生息地


汽水湖からの帰り道、あたしたちは領土の確認も兼ねて来た道とは別のルートをとった。


汽水湖には、あたしの大好物のうなぎが生息していると聞いて来たので、用事が済んだ帰り道では必ず食べてみようと思っている。


そのため、コリン君には無理をお願いして、調理器具と調味料(たれ用)を持って来てもらっている。


実は汽水湖のうなぎの事は、メイアやアリシアには内緒にしている。


なぜなら、うなぎに釣られて付いて来てもし事態が最悪の方向に転がれば、二人が戦争に巻き込まれる可能性が高かったからだ。



でもこれでもし、うなぎの事がもしばれたらアリシアの容赦ない罵倒が待っている。


最近では、アリシアの責めが快感になりつつある自分がちょっと怖い。


これは、なにもアリシアの所為だけでなく、ヴォルルさんやサリエルや変態リリーの影響も十分あると思う。



メイアもあたしが一人だけうなぎを食べたことを知ったら、きっとぷくぅっと頬っぺたを膨らませるに違いない。


だから、この事は超極秘事項として、完全に隠蔽いんぺいすることになっている。


・・・


セレネさん、この辺りなら、うなぎがたくさんいるんじゃないでしょうか。


コリン君が複雑に入り組んだ湖岸線を見ながらゆびを指した場所は、確かに湖岸ぎりぎりまで草木が生えて少し薄暗くなっている。


こういう場所の方が、上空からの鳥の捕食を受けにくいのだ。


これで、うなぎ釣りをする場所が決まった。



コリン君は早速、餌のみみずを針に付けて、あたしに竿を手渡して来る。


リアムは、先に料理用のかまどを作るため、大き目の石を探しに行ってしまったので、あたしとコリン君で竿をポイントへぶん投げる。



セレネさん、うなぎは濁りのある場所とか障害物がある暗くて身が隠せる場所を好みますよ。


えーーーっ、コリン君ずるいよ。  そういうことは、竿を振る前に行ってくれなきゃだよ。



どっちが釣っても、みんなで食べるんだから関係ないですよね?


いやいや、自分が釣って食べるのが最高に美味しいんだよ。  わかってないなあ。



ちょっと聞いてもいいですか?


うん、なに?


セレネさんって、蛇が大の苦手じゃないですか。  なんで、うなぎは平気なんですか?


はっ?  全然違うよ。  だって、うなぎには鱗がないでしょ! 



いやいや、残念ながらうなぎにも皮膚に埋没した小さなウロコが有るんですよ。


えっ、うそっ!  お願いコリン君。  うそだって言って!


あ・・ う・・


セレネの必死の形相にコリン君がたじろぐ。


う・・ うそ で・・す・・


ムゥ~  コリン君のバカッ!  大きらい!



あっ、セレネさん。  ほらっ、引いてますよ! 


バシャ バシャ


やったー、かば焼きゲットーーー!


あたしが、大暴れするうなぎを何とか岸の近くまで引いて来たところ、そいつがどこからともなく現れた。


もにゅぱ~


独特な鳴き声の鳥。 そして、そいつはあたしの釣った大切なうなぎを一飲みにすると、そのまま対岸へ飛び去っていった。


おい、こらっ!  もにゅぱー  あたしのうなぎを返せーーーっ!


ひょんなところから、もにゅぱ~の生息地が目の前の汽水湖であることが判明したのに、大きなうなぎをさらわれたショックの方が大きいセレネであった。



次回へ続く・・・

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