第317話 ◆やさしい女王様
◆やさしい女王様
セレネは隣国の開拓者たちが不法に国境を越えてセレネ王国の国土を開拓し始めているとの報を受け、リアムとコリン君を伴い汽水湖の湖畔まで視察に赴いている。
しっかし、広い湖だね~。 知らなかったら海だと思っちゃうよ。
本当ですね。 しかも淡水と海水が混ざってるなんて、僕初めてみましたよ。
そうだな。 俺もあちこち行ったが、こんなにでかい湖は、ほかにラクト湖ぐらいだ。
リアム、ラクト湖って?
おう、ラクト湖ってぇのは、エリージャ伯爵領の東側にあるでっかい湖さ。
エリージャ伯爵ですって?
あれっ? セレネ様はご存じでしたか?
リアムってば、セレネでいいわよ。 実はあたし、エリージャ伯爵様のところでメイドしてたことがあるのよ。
えっ、そうなんですか。 コリン君が意外そうな顔をする。
ほんのちょっとの間だけどね。 伯爵様の部屋をメイアがぶっ壊しちゃったから、そのままトンズラしちゃった。
うわ~ なかなかやらかしてたんですねー。
まあね。 若気の至りってやつよ。 ああ、昔はあたしも純情だったのよね~。 ←遠い目
なんでそれが純情なんですか?
はい、この話しはもうお終い。
では、問題の場所に行ってみますか。 リアムが湖の遥か先をゆび指す。
まだまだ遠いのね。 リアムが指した方角は、水平線と地平線しか見えない。
まあ、湖がでかいですからね。
馬に乗って来て正解でした。
でも、あたしは股とお尻が痛くて・・・ 下りて歩くとがに股で恥ずかしいわ。
セレネさん、馬に乗るの初めてでしたもんね。 最初はだれでもそうですよ。
ハハハ 明日は歩けなくなるから覚悟しておいた方がいいかもな。
そうなの? やっぱり、飛行船をチャーターすればよかったなー。
セレネさん、飛行船はそれなりの人が居ないと着陸できないんですよ。
なにそれ、コリン君どういうこと?
飛行船は地上におりるとき、ロープを投げて下にいる人に引っ張ってもらうんです。
だから、飛行船がおりる施設と係留するための大勢の人が必要なんですよ。
最近は巻上機を使うらしいけど、動力用に家畜とか必要だしな。
リアムもコリン君も詳しいのね。
あれ? セレネさんってアンディさんと飛行船関係の会社の創設を検討してませんでしたっけ?
え~と・・ アハハ
あたしは、最近笑って誤魔化す技を極めたので、早速使ってみる。
なんだかんだ、そんな話しをしているうちに、どうやら目的地に着いた。
おそらく、隣国の開拓者だと思われる人々が、手にスコップやら鍬などを持って道を塞いでいる。
こっから先は、俺たちが拓いた土地と村だ。 誰も村には入れないぞ!
お前ら、このお方を誰だと思っているんだ!
おぉ、これは天下の副将軍でやってた名セリフじゃないの? マジでカッコイイかも。 ←心の声デス
このお方は、セレネ王国の女王さまだぞ!
いやいや、リアムってば。 そこは、「天下のセレネ女王さまにあらせられるぞ!」でなくっちゃ。 ←心の声デス
リアムの口上に、開拓者たちがどよめく。
いや、女王さまだかなんだか分からないが、そんなことは関係ない!
俺たちの村は俺たちの国が守ってくれるさ! なあ、みんな!
そうだ、そうだ。 帰れ、帰れ!
セレネさん、どうしますか? コリン君が、やれやれ顔で呆れている。
力ずくで行くなら、俺に任せてくれ!
リアム、ダメよ。 争いは憎しみしか生まないわ。 ←実は一度言ってみたいセリフだった。
でも、このままでは埒が明かないですよ。
ここは、ひとつあたしに任せて。 ←これも言ってみたかった。
あなた方がこの一帯を苦労して開墾したのは分かります。
それを否定するようなことは致しません。
ただし、ここはわたくしの国の領土です。
あなた方が、これからわたくしが言うことを守ってくれるというのならば、この村のことは認めて差し上げましょう。
なんだ。 それはいったいどういう条件だ?
村の住人の代表者らしい、ごつい大男が聞いてくる。
ここから南に30kmのところに新たな国境線を引きます。
あなた方は、そこより南へ立ち入ることは許しません。
また、湖での漁は制限しませんが、獲った魚介類などの一部は、わたくしの国へ税として納めていただきます。
どうでしょうか? この条件を飲んでいただければ、国境の件についてあなた方の国と交渉しますが?
ほんとうか?
女王セレネに二言はありません。
わかった。 その条件は守ろう。
ちょっと、お優しいセレネさん。 それで本当にいいのかよ?
こいつらを甘やかすと、どんどん侵略して来るぜ。
リアム、だいじょうぶよ、まあみていなさい。
最後に一つだけ、言っておきます。
わたくしは、天界で多くの神や天使たちと戦って勝利を収め、天使サリエルを娶りました。 ←ハッタリ
またわたくしの友には、ヴォルルやララノア、アンディという、この世界で一二の力を誇る者達がおります。 ←本当
もし、あなた方が約束を少しでも違えるようなことがあれば、我が国の軍勢が一夜にしてあなた方の国を滅ぼすことでしょう。
おおっ、あの天界と戦をしたのか。
ヴォルルという最強の魔女の話しは聞いたことがあるぞ。
わ、わかった、その約束は必ず守る。
・・・
帰り道、コリン君とリアムが、妙にニヤニヤしている。
なによ、二人とも。 そんなにおかしなことなんか、あったかしら?
いや~ セレネさんが、わたくしなんて女王様のようなしゃべり方をするもんだからつい。
いやいや、あたしも一応、女王様ですからね!
よそゆきのしゃべり方ってよ、声が二段階くらい高くなってちょっとキモイよなっ、コリン。
ちょっと、リアムさん。 僕を巻き込まないでくださいよ!
キィーーー!
セレネが怒ったので、次回へ続く・・・
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