第316話 ◆国境線

◆国境線


セレネ王国の開拓申請で取得した国土は、初上陸地点を起点として、半径5000kmである。


これは、セレネが住んでいた日本の南北約2850kmに比べてはるかに広大である。


セレネが欲深いので人口の割りに申請した国土が、ばかっぴろいのは許してあげて欲しい。



ちょっと、誰が欲深いのよ!  社会科が少し苦手だっただけじゃないの!


と本人が言っています。 たぶん日本の国土の大きさが分からなかったのでしょうね。 鼻ほじ・・



冗談はさておき・・


冗談だったのか~い!


で、冗談はさておき、セレネ王国がある大陸には、別大陸にある国々がようやく本格的に進出を開始し、開拓ラッシュが始まっていた。



未開のこの大陸の南端は天界が近いため、他の大陸からやって来る船が北から吹く強風に流され、天界に近づいて沈没させられるという歴史があり、なかなか移民たちがこの大陸に上陸できなかった。


そして、天界に近づいた者は二度と生きて帰って来れないという噂がたった。


そのため大陸自体の気候は人々が生活するのに適しているが、長い間放置されてきたのだ。



近年、別大陸にある国々は人口の増加により、住む場所や農地などが手狭になり移民先を探し求めていた。


そして、唯一の広大な手つかずの広大な土地がある、この大陸へと進出が始まったのだった。


状況としてはセレネの世界でいうところの大航海時代やアメリカ大陸の開拓時代に似ているかもしれない。


・・・


セレネたちが築いた王国は、海岸線に沿って北へと順調に開拓が進んでいた。


しかし、国境を挟んだ隣りの国は、大陸の北端から南に向かって開拓を進めて来たため、とうとうセレネの国の国境付近まで到達してしまった。



国境を挟んだセレネ王国側には、大きな汽水湖きすいこがあり、しじみやうなぎなどセレネの大好物がたくさん獲れた。


そして、お隣の国の開拓者たちは勝手に国境を越えて、この汽水湖の湖畔の土地を開拓し始めたのだった。



国境付近のこの状況については、いち早く首都に居るセレネのもとに報告があがり、隣国の国王に書簡で国境を越えないよう申し伝えた。


しかし、その後も越境開拓は一向に止む気配がないため、とうとう軍隊を派遣せざるを得ない事態になってしまった。



他国の土地を開拓することは平和条約に違反した行為であったが、開拓者からしてみれば苦労して開拓した土地を追い払われることになり、当然立ち退く気配を見せない。


それでは、いっそのことセレネ王国の国籍を取得すれば良さそうだが、自国の国民が他国に流出するのは国力低下につながるため、それは許されない。


そしてこの事態はどんどん、こじれて行ったのだった。


・・・


セレネは食い意地が張っているため、好物のうなぎが獲れる汽水湖を他国に奪われるのは到底許さない。



おいっ!  確かに食いしん坊だけど、その言い方は悪意を感じるし!


さっきから、あたしに対してずいぶんとひどい言い用じゃない!  あっ、 あんたってもしかして敵国側の人でしょ!


むやみに他人のことを誹謗中傷するのはやめてよね!



え~と  冗談はさておき、セレネも隣国と戦争になることは避けたいと思っており、ようやく自国の北の端の汽水湖まで視察に出かけることにしたのだった。



次回へ続く・・・

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