第309話 ◆正気に戻ったアリシア
◆正気に戻ったアリシア
あたしたちが天界を目指していたころ、ヴォルルさんとアリシアは無事エルフの里に着いていた。
エルフの里では、ララノア、ヴォルル姉妹のひさびさの再開を記念して、ララノア主催のパーティが開かれた。
パーティには里の住人も多く出席し、美人姉妹との楽しいひと時を過したのだった。
アリシアが頭を強打してから、突然よい子になってしまった現象については、里の長老が作った煎じ薬を飲ませたら元に戻ったらしい。
あとから聞いた話しによれば、超臭くて苦い薬だったらしく、アリシアは飲むのを嫌がって逃げまわったそうだ。
そこで、ヴォルルさんが魔力を使い拘束して動けなくして、無理やり口を広げ流し込んだらしい。
その薬を飲んだ直後、アリシアは激しく痙攣して、白目を剥いてまる一日意識を失っていたという。
まったく恐るべき煎じ薬だ。
でも、目を覚ましたアリシアは、すっかり元通りになったようで、なんだかエルフの闇みたいな部分を垣間見た気がする。
もしかして人間でいう狐憑きの逆バージョンみたいなものだったのだろうか。
・・・
あたしは、ララノア宛てに今回の経緯いきさつやら、アリシアの成長記録を書いたノートをヴォルルさんに預けたので、もしアリシアが望めばモッフルダフとあたしに依頼のあった修行をいったん終わりにして、ララノアのもとで暮らすかの判断を任せた。
で、アリシアの出した結論は、エルフの里で暮らすのは死ぬほど退屈なので、早くみんなの所に帰りたいだった。
まあ、あたしとしてもアリシアが居れば退屈はしないんだけれどね。
それに戻ってきたら’けいちゃん’の子守も頼めるだろうし、いろいろ便利ではある。 ←こき使う気満々
アリシアとヴォルルさんは、結局2週間ほどエルフの里に滞在したのち、セレネ王国への帰路についた。
アリシアたちも真ん中の島を通るので、あたし達とはそこで落ち合うことになる。
モッフルダフも真ん中の島に来るので、何年かぶりに初期メンバーの再開になりそうだ。
なんだかんだで自分の国を出てから1年以上経ってしまった。
その間、なんと子どもまで産んでしまったし、行ったら二度と戻って来れないと言われた天界にまで行って、しかも無事に戻って来た。
それにしても、この世界の移動手段が船しかないのが、不便でたまらない。
飛行船はあるのだけれど、そんなに速くないし航続距離も長くない。
ジェット機が欲しいとは言わないけれど、せめてプロペラ機ぐらいあってもいいじゃないか。
あたしが、ひとりでそんな事をブツブツ呟いているのを傍にいたアンディが聞いていたらしい。
そして飛行機に興味を持ったようで、夕食の後にいろいろあたしに聞いて来た。
なので、飛行機が飛ぶ原理や向こうの世界でどのように利用されているのかなどを詳しく教えてあげた。
でも、こっちの世界で飛行機を作れる技術は、まだ発明されていないし、あたしが生きている間に実現できないだろう。
しかし、次の日にアンディが実に興味深いアイデアを持ってきたのだった。
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