第302話 ◆用心棒
◆用心棒
次の日の朝早く、あたしは、まりあ先輩に会うためにお城へ向かった。
子どもを連れ去られ、前の日に子どもを産んだとは思えないくらい体が滾たぎっている。
その怒りを抑えつつ、まりあ先輩に謁見を申し出た。
まりあ先輩は、あたしが落ち着いてからお見舞いに行こうと思っていたのに、あたしが急にお城に来たのでたいそう驚いていた。
謁見の間で昨日あったことを、まりあ先輩に包み隠さず話したら、まりあ先輩が泣きだしたので、あたしの方が先輩を慰めてしまった。
あたしは、この国で産後1ヶ月ほどゆっくりさせてもらうつもりだったのだけど急遽天界がある、あの地図のモヤモヤした大陸へ向かうことにしたのだった。
なにしろ、自分の子どもがさらわれたしまったのだから。
サリエルが一緒だとは言え、神様が実の母親から子どもを奪うなどとは、絶対に許せない!
この国に来た時の船は、ヴォルルさんとアリシアが乗って行ってしまったので、あたしには今船が無い。
それで、まりあ先輩にある程度の量の水と食料が積める船を貸してもらえるようお願いしたら、快く引き受けてくれた。
急なお願いだったけど船は3日で用意してくれると言う。
あたしは、持っていたお金と足りない分をまりあ先輩から借りて、航海に必要な物資を買いに出かけた。
買い物は、メイアとシルフ×2と一緒だ。 なんだかこっちの世界に来たころみたいで懐かしい。
最初はシルフ、次はメイアと出会った。 そして、だんだんと仲間が増えたんだっけ。
港沿いのお店で、航海に必要な物は大概揃う。
あたしは、この港の活気ある雰囲気が好きだ。
買い物リストに書いてある、いろいろな物を順番に買い揃えて行く。
すると奇跡が起きた。
なんと港に懐かしいモッフルダフの船が入港して来たのだ。
モッフルダフには何年ぶりに会うのだろう。
あたしは、モッフルダフの船が着くのを出迎えるために桟橋へ走った。
船上にいるモッフルダフは、まだあたしには気づいていない。
あたしの事を見つけたらきっと驚くに違いない。 アルビン、スヴェン、ラッセも乗っているのかな?
・・・
モッフルダフは、あたしを見つけると駆け寄ってきて、あたしを抱きしめてくれた。
ふわふわした毛糸に包まれたようで、あたしの心も温かくなった。
港のちょっとお洒落なカフェで、あたしはモッフルダフと別れてから起きた色々なことを話した。
モッフルダフもいろいろな国の町のこと、楽しかったことや苦労話をしてあっと言う間に時間が過ぎていった。
モッフルダフは、あたしの子どもが連れ去られてしまったことを自分の事のように怒った。
そして、あたしが天界に子どもを奪い返しに行くことを知って、ある提案をして来た。
モッフルダフは、自分も一緒に行ってあげたいのだけれど、ある国の王様から頼まれた王女の結婚祝いの品々を期限内に届けなければならないため、どうしても一緒に行くことができない。 なので、あたしに助っ人を付けてくれると言う。
なんでも、その助っ人という人は、この世界で3本の指に入るほどの強者だそうだ。
人手が足りないというか、あたしとメイアとシルフ×2の4人で天界に殴り込むのは正直不安だったので、助っ人はありがたいのだけれど、いったいどんな人なのだろう。
ムキムキマッチョな大男なんかだったら、はっきり言ってどう接したらいいか分からないし、もしかしたら人では無いかも知れない。
モッフルダフにそう言うと、
ホッ ホッ ホッ と懐かしい笑い声を響かせて
ならば、直ぐに会ってみればいいよ
と言った。
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