第298話 ◆船酔い?

◆船酔い?


あたしたちが乗っている船は、元はアンデットらが使っていた海賊船だ。


この船は結構大きな船で以前使っていた、まりあ先輩から借りた船の3倍くらいある。


当然、船倉も大きいので、食料も水も凍らせれば大量に積めて保存もできる。


先を急ぐ旅なので次の目的地を、まりあ先輩の国にして出来る限りノンストップで突っ走る。


ノコッチ君や鯱の兄弟の休憩は、海上で取ってもらうのだ。


よって凄く長い船旅になるので、水平線に向かっての「バカヤローーー!」は、何十回か叫ばなければならないだろう。


・・・


そして、船旅が長いのに困ったことが起きた。


あたしは、このところめっきり波に弱くなった。  たいした波もない穏やかな海の日でも、船酔いが酷いのだ。


特に食事時になって、食べ物のいろいろな匂いがしてくると更に気分が悪くなる。

ほんとうに酷い時は、ベッドから起きられないほどだ。

ただし、ダイエットもしないで、この2週間で2Kgも痩せたのは ちょっと嬉しい。



今日は珍しく波が高く、朝から真っ青な顔をして船縁に張り付いている。

たいして食べていないので、気持ちが悪くても出るものがない。  なので余計に苦しい。


セレネ、大丈夫?


みんなが心配して代わりばんこに様子を見に来てくれる。


サリエルがほとんど食事が出来ない、あたしのためにお粥を作ってくれたのだけど、その匂いがNGで食べられない。

こんな状態なので一番近い港に寄ってもらって、お医者さんに診てもらった方が良いのではと思い始めていた。


それこそなにか悪い病気だったら、あたしは最悪この異世界で死んでしまうかもしれない。

もっとも、もう向こうの世界に未練はないのだけれど・・・


船は揺れていないのだが、食べていないので足元がふらふらする。

もう、おとなしくベッドで寝てようと思い、船室の方に歩き始めたところでヴォルルさんがやって来た。


セレネちゃん、悪阻つわりひどいみたいね。


えっ?  つわり・・  ええーーーーっ!


あ・・ あぅ  思い当たる!  思い当たるよ!  そうか・・・ これって、つわりなのか?

そういえば、月のものが来ていないじゃないか!

やっぱり、あたし妊娠してたんだ。


ってことは、お腹の中の子は天使とのハーフなのか?


あたしは嬉しかったり、びっくりしたり、いろいろな気持ちがグルグルと頭の中を渦巻いてその場に倒れ込んでしまった。


・・・

・・


しばらくして気が付くと自分のベッドに寝かされていた。 きっとヴォルルさんが運んでくれたのだろう。

ベッドの中で目を瞑っていると、いろいろな事が思い浮かんでくる。


まさか、あたしが子供を産むことになるなんて・・・ しかも相手が男性じゃないよ~。


なんか、嬉しいんだけど複雑な気持ちだ。  こっちの世界では、ほんとうに予想もできないことが起こる。


そして、あたしは自分が妊娠中や出産の知識があまりないことに気づく。

こっちの世界にはネットという便利なものも無いし、サポートしてくれる母親もいない。

ましてや、産婦人科とかお産婆さんなんかも居ないではないか。


あたしは急に不安になってきてしまった。

もしも何かあったらどうしたらいいんだろう。


あっ、そうだ。  エイミーがいたじゃないか。  あたしは、急にエイミーのことを思い出した。


エイミーは確か、まりあ先輩の国にいるときに子どもを産んでいたはずだ。

っていう事は、まりあ先輩の国まで行けば、何とかなるのではないか。


あたしは何だかほっとして急激に眠くなり、また深い眠りに落ちていったのだった。


・・・


女の子は妊娠、出産があって、たいへんなのだから世の男性はもっといたわりなさい!

ツンデレアリシアがこの場に居たら、きっとこう言うに違いない。


だから、次回へ続く・・・

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