第290話 ◆アリシア、セレネを吹き飛ばす
◆アリシア、セレネを吹き飛ばす
あたしは次の日から、全身から炎を激しく吹き出すための特訓に力を注いだ。
ひとつは、アドヌラスと対峙した場合の防御力強化、そしてもうひとつが金の鎖を焼き切るためだ。
なにしろサリエルが余計なことをしてくれたので、昨日は悲しくて一晩シクシク泣いて過ごしたんだ。
早くこの変態にしか見えない恰好を終わりにしたい。
なぜならヴォルルさんが、隙があれば服をめくってくるのが嫌なのだ。 まるで小学生の男子かってくらい楽しそうにめくる。
このままじゃ自分が、ほんとうの変態になりそうで怖い。
最初は ボォーー くらいだった炎も3日目には ゴォオオー くらいまで出せるようになった。
指先からちょろちょろ出ていたころと比べると凄い進歩だ。
そして、今日はこれからアリシアにアドヌラスの代わりに、あたしに火炎魔法を放ってもらい完成度を見る予定だ。
アリシアの魔力はララノア譲りで強力なため、アリシアの火炎魔法に耐えられれば、目標をほぼ達成したと考えていいだろう。
一般的に、炎系には氷結魔法で戦った方が良いと思われがちだが、この場合はどちらかの威力が明らかに勝っている場合に有効なのであって、防御だけを考えれば同一魔法で受け流すのが良い方法なのだ。
セレネ、ほんとうに思いっ切りやって大丈夫なんですか?
うん、アリシア。 気にしないでやっていいよ。 あたし、いまならヴォルルさんにでも勝てそうな気がする!
わかりました。 それでは船尾の方へ移動しましょう。
うん? なんで? ここでいいじゃん。
ダメですよ。 ここじゃ船が壊れるかも知れないじゃないですか。
ア・・アハハ・・ そ、そうだね。 (ちょっ、どんだけぶちかます気なんだよ)
あたしとアリシアとサリエルで船尾に移動する。
サリエルは、嫁いで来てからいつもあたしのそばから離れない。
それでは準備してください。
よしっ、はぁーーーーーっ!
ゴオオォォーーー
あたしの全身から激しく炎が噴き出す。 しかもトルネードのように火炎が渦巻く。
ゴゴゴゴオオォーーー
ここまで威力が増すとは自分でも思っていなかったので正直驚く。
ホホホホッ さあ、いつでも来なさい!
腰を落とし全身に力を込めて防御体勢を取る。
いきますっ!
我がエルフ族の誇りにかけて我が魔力の全てよ、目の前の敵を焼き尽せ!
デェスパレイト ファイアーーー!!
シュゴオオォォーーー バッバアァーーーン
ギャーーーー!!
・・・
・・
・
どうやらあたしはあの時、死にかけていたらしい。
いや、サリエルがあの場にいなかったら、確実に死んでいただろう。
3kmほど飛ばされて虫の息で海の上を漂っていた あたしをメイアが船まで運び、サリエルが天使の力で治癒回復させてくれたのだ。
それでもまる2日間、意識が無かったらしい。
アリシアもこんなことになるとは思ってなくて、意識が戻ったあたしを見ると飛びついて泣きじゃくった。
ちょっと痛い・・アリシアさん痛いデス。 あたし怪我人なんですけど!
アドヌラスがどんだけ強いかは分からないけれど、今回の件であたしの心はかなり折れてしまった。
もともとこっちの世界の住人では無いので、魔力の才能には限界があるのは分かっていたことだけど、こうまで差があるなんて・・・
それでも、あの日からサリエルやみんなが付きっきりで世話をしてくれたので、あたしは順調に回復していった。
そんな日々が過ぎていくと同時に、ランランランド諸島はすぐ目の前に近づいていたのだった。
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