第289話 ◆サリエルの勘違い

◆サリエルの勘違い


ノコッチ君(船のエンジン)と鯱シャチの兄弟の調子も良く、船は順調にランランランド諸島を目指して進んでいた。


ランランランドがある島は、火山の大爆発で今は人が住めない状態だ。


なので、ランランランドで働いていたお姉さんたちが避難している島で水と食料を補給する予定だが、あたし達はその島の状況がよくわかっていない。


アドヌラスがどのあたりに出没しているのかは、現在位置からでは全く分からないが、この方角の空が燃えているのは今も変わらないし、もしかしたらその島も被害に遭っている可能性がある。



セレネさん、洗濯物をすすぐ水なんですけど・・  そろそろ節約した方がいいですかね?


今日もサリエルは、テキパキと働いている。


う~ん そうだね。 そろそろヤバイ気がする。


そうだ、今日はまとまった雨が降りそうだから、貯水槽に雨水を溜めるシートを出しといてくれる。


はい♪


酔った勢いで嫁にしてしまったけど、サリエルはほんとうに可愛い。


サリエルは、天界でのいたずらが過ぎて罰としてこっちへ期間限定で追放されていた。


もう少しで追放期限が切れて天界に戻れるところだったのをあたしがKISSしてしまったので、あたしのところに嫁いで来たのだ。


本人は300年謹慎しただけのことはあったようで、あたしと会ってからはイタズラは一度もしていない。


サリエルは天界と真ん中の島以外は出たことがなく、今回の船旅も初めての体験でとても楽しそうだ。




ねえ、サリエル。


はい、なんでしょう?


あの空が燃えてるのは、アドヌラスって火の魔物だってヴォルルさんから聞いたんだけどサリエルも知ってる?


あ、はい。  自称火の神様ですね。


やっぱり自称なんだ。


だって、アドヌラスって天界に属しているわけではありませんし、それに見た目だけで魔物だって分かりますよ。


たしか前に大暴れした時、どこかの洞窟に封印されたと聞きましたけど。


ふ~ん。  ということは、その封印が解けたか誰かがわざと破ったかのどちらかだね。


そうですね。


それでね、一応あたしたちの旅の目的地に行く途中で、そのアドヌラスに遭遇する可能性が大きいし、ヴォルルさんがこの際だから退治するって言ってるの。


・・・


で、あたしは今、全身炎になる魔法の特訓中なんだけど、サリエルがもしアドヌラスと戦うことになったら大丈夫なのかなって心配なんだ。


それでしたら、ご心配には及びません。 サリエルは天使ですから。


え~と。 天使だと何で大丈夫なのかな?


それは神のご加護があるからです。


その神ってもしかしてあの変態の神様?


そ・・そうですね。  でも神様はあのお方だけではありませんから。


ハハハ・・・ ほかにも変態が大勢いるのかぁ・・



そうだ、サリエル。 ほら、見て♪


鎖が熱で溶けてもう少しで外れそうなんだよ♪  あたしは嬉しくてようやく外れそうになっている鎖を服をめくって見せた。


ま、まぁ、たいへん。 ちょっと待っててください。


えっ?  ちょっ・・


えいっ♪


ギチギチギチ


あ・・あああぁぁ・・・



セレネの落ち込み方が半端ないので、次回へ続くのであった。

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