第288話 ◆あっちっち!

◆あっちっち!


出航して2日目。  あたしは、全身から炎を出す魔法の特訓をヴォルルさんから受けていた。


修得すればアドヌラスだけでなく炎系の魔物は恐れる必要がなくなるので結構真剣に取り組んでいる。


ただしこの魔法を使うと服が炎で焼けてしまうので、服を脱いで全裸で修行をしなければならないのが超絶恥ずかしい。


それでもまだ、サリエルが縛りで付けた金の鎖が巻き付いているのが僅かな救いだ。



はい、セレネちゃん。  目を瞑って、全身から炎が噴き出ているのをイメージして。


お腹に力を入れて、ゆっくり息を吸ってぇーーー!  はいっ、ボオォーーッ!


バビュブブッ


う~ん。  まだ両腕と両膝下からにしか火が出ていないわよ!



もう一度、全身火達磨をイメージしてぇーーー!  はいっ、ボオォーーーッ!


ボォーー ブヘッ


そうそう、いいわよ。 いま、おっぱいまで火が出たわ~♪


人が見ていたら恥ずかしくて、とてもじゃないけどこんなことは出来ない。


それでも一生懸命頑張った甲斐があって、夕方には全身から炎が出せるようになった。



セレネちゃん、なかなか才能あるわよ。


ほんとうですか?


ええ、それじゃあ明日からは炎の威力を上げる特訓に切り替えるから、今日はご飯をモリモリ食べておいてね。


いやあ、もう全身から炎も出せるし、これで大丈夫なんじゃないですか。


あらあ、ダメよ。  それじゃもう一回炎を出してみて。


はい。 いきますよ!


ボォーーッ



これでどおだっ!


ヴォルルさんは、そう言うとあたしに向けてもの凄い火炎を吐いて来た。



わわっ、 あっちっち!  ちょっ、ヴォルルさん止めてください!  


ほらね。 セレネちゃんのレベルだと、まだまだ炎の威力が足りないのよ。


これだと、アドヌラスに対抗するどころか、あっと言う間に消炭にされるわよ。


わかりました。 わかりましたから、もう炎出すの止めてください!  熱いですって!


あとから見たら、金の鎖が少し溶けていた。  これならもしかすると修行中に焼け溶けて外れるかも知れない。


あれっ?  鎖が溶て外れるのは嬉しいかもだけど、もし溶けちゃったら本当に全裸になっちゃうよ。


あたし、いったいどうすればいいのーーー。



後にセレネフェニックスと名付けられる全身炎の魔法であるが、その完成までにはもう少し時間がかかる。


よって、次回へ続くのであった。

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