第282話 ◆羞恥プレイですか?

◆羞恥プレイですか?


ヴォルルさんの家の物置から猿ぐつわをされた上、両手両足を縛られたメイドさんが見つかった。


メイドさんは3日間もそのままの状態だったらしく、ひどく衰弱していたらしい。


もちろんヴォルルさんの怒りはたいそうなもので、メイドさんがある程度回復したのをみて、この別荘に飛んで来たのだそうだ。


そして別荘に突入しようかと思っていたところ偶然、玄関脇の石に腰掛けていたあたしを見つけて話かけてきたのだった。


あたしはヴォルルさんの話を聞いて、いままでリリーさんに盗撮されたことや顔や姿がヴォルルさんにそっくりな事などを説明した。



それを聞いたヴォルルさんが、それじゃセレネちゃん、


ごにょ ごにょ ごにょ でしょ。  で、ごにょ ごにょ ごにゅっ でどうかしら?


と言って来た。  ←いまココ



ごにゅっ については、はっきり言ってすごく抵抗感があった。


しかし、ほかにいいアイデアも出せず、しぶしぶ協力することになってしまった。


あたしは、ヴォルルさんに言われたとおり自分の部屋に戻り、明日の早朝に行動を起こすために眠ることにした。



・・・


次の日、まだ辺りが薄暗いうちに、あたしは自分の部屋をそっと抜け出した。


ヴォルルさんが言うには、この時点でリリーさんは既に気が付いていて、あたしの後を追って地下室に来るらしい。


で、あたしはというとヴォルルさんの指示通りに裸に鎖だけの状態で、部屋から犬のように四つん這いで地下室へ向かっている。


なんでもリリーさんを100%罠に嵌めるには、どうしてもこの恰好でなければいかないらしい。


でもこれは、どう見ても変態女そのものだ。  この別荘の閉ざされた空間だからなんとか耐えられるギリギリの線だった。


これで、もし額に’犬’とか書かれたらあたしの精神は崩壊していただろう。




これでリリーさんがあたしを追って地下室までやって来たら、そこで待ち構えているヴォルルさんが取り押さえて尋問する算段になっている。


長い廊下を這いずって進むが、この羞恥プレイはあたしの予想をはるかに超える精神的ダメージを受けるものだった。


誰もいないはずなのに、突然誰かが現れるのではないかと心臓は常にバクバク言っている。


何も着ていないのに体が熱く、息がハァハァと荒い。  涙も滲んで来る。


やっとの思いで階段の手前まで辿り着く。


が、階段を四つん這いで下りるのは、もの凄い恐怖感がある。  とてもじゃないが、頭から下りれないので足の方からゆっくり行く。


時間をかけ何とか1階まで到達するが、ここからキッチンまで行き、更にその先の階段を下りなければならない。



部屋を出た時から常に後ろに人の気配を感じているので、ヴォルルさんの作戦通りにリリーさんが姿を消してついて来ていると確信している。


ドキ ドキ ドキ


ハァ ハァ ハァ


ときどき誰かに体を触られているような感じがする。  もちろん気の所為だと思うけれど、あたしのあらゆる部分が敏感になっているのだろう。


体がピクピクし始める。



あたしは、もう途中から泣いていた。  キッチンの床には、点々と涙がこぼれた後が付いている。


それでも我慢して、地下室の階段前までやって来た。


あとは、この階段を下りるだけだ。  


あたしは、ゆっくりと階段を下り始めた。


何段か下りると急に室温が低くなる。  火照った体が急速に冷えて行く。


もう少しでヴォルルさんがリリーさんを捕まえてくれるはずだ。  そうすれば、あのネガも何とか取り返せるだろう。


ハァ ハァ ハァ


ジャラ ジャラッ  鎖が地下室の石の床に擦れて金属音が響いた。



ピッ カシャッ カシャッ カシャッ


鎖の音が鳴りやまないうちに、フラッシュの光とシャッター音がそれに続く!



あ、ああっ  イヤーーーーッ!



ガタッ ガタタタッ


ドタッ


あたしの悲鳴が響く中、二つの黒い影が地下室の中で暴れまわっていた。



つ、捕まえたーーー!!


ヴォルルさんのその声を聞きながら、あたしの意識は薄れて行った。



セレネさんが気を失ってしまったので、次回へ続く・・・

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