第280話 ◆もう、もれちゃうっ!
◆もう、もれちゃうっ!
パタッ パタッ パタッ
誰かが地下室の階段を下りてくる足音が、どんどん近づいて来る。
ペタ ペタ ペタ
今度は地下室の床を歩く音が自分の方に向かって来る。
あれ~?
くっ 見つかった?
おかしいなぁ。 朝食用に用意した野菜ってどこに置いたかしら・・・
あっ、そうか。 こっちの棚だっけ。
ドキ ドキ ドキ
あれは、リリーさんの声だよね。 明日の朝食の準備に降りて来ただけか・・・ 助かった~。
リリーさんがキッチンの方へ戻って行ったのを確認してから、あたしは床に散乱している写真を一か所に集めた。
集め終えてから、ネガ探しを再開する。
う~ それにしても地下室って冷えるなあ・・・
ぶるっ
あ゛ーーー こんな時にトイレに行きたくなっちゃったよ。
鎖で体が縛られているので、トイレとかシャワーとか時間がかかるし面倒くさい。
ネガ探しは後回しにしてトイレに行こうと階段を途中まで上がっていくとキッチンに人の気配がする。
あれっ、 リリーさんが、まだキッチンにいる?
そしてこんな時に限って尿意が我慢の限界点にだんだん近づいていく。
う゛~ リリーさん、早くキッチンから出っていってよーーー
足の指先が落ち着きなく動き始める。
この状態に突入すると限界点はもうすぐそこだ。
あ゛ーー もう、もれちゃうっ!
さすがにヤバクなったあたしが、無意識に目で周りに何か入れ物になるような物がないか探し始めた時、
バタンッ
キッチンの方で扉が閉まる音がした。
ふぅ~ どうやらリリーさんがキッチンを出て行ったようだ。
ダダダッ あたしは、ダッシュでトイレを目指す。
あー なんとか間に合った~
極限近くまで我慢したあとの、この解放感・・・ くぅーー
地下室が予想以上に冷えることが分かったので、いったん自分の部屋にもどって寒さ対策をすることにした。
自分の部屋の隣がリリーさんの部屋なので、気づかれないようにそぉっとドアを開ける。
上も下も厚手のものを着こむことにしたのだけれど、鎖のせいでいまひとつ体にフィットしない。
何枚か着こんでからドアをそっと開け、首だけだして廊下の左右を確認する。
もちろん別荘には自分とリリーさんしかいないので、リリーさんが隣の部屋にいるなら地下室までは誰とも会わない。
よし、再探索開始するぞ! 小さ目の声でひとり檄を飛ばす。
そろりと廊下に出て数歩歩いたところで、
セレネさま、こんな時間にお出かけですか?
と後ろからリリーさんの声がして、心臓が止まるかと思うほど驚いた。 そんな時、人は変な声が出る。
うひゃあはい・・
あーーー びっくりしたぁ・・・ リ・・リリーさんこそ、何をしてるんですか?
廊下で物音が聞こえたので、様子を見にドアを開けたらセレネさまが歩いてらしたので・・・
そ、そうなんだ。 リリーさんって耳がいいんですね。
まだ、心臓がバクバクいってる。
もしかして、お腹が空きましたでしょうか。 でしたら明日から夕食はもう少し量を多くいたします。
あ、いえ。 そんなことはないです。
そうですか・・・
うわっ、 やっぱり疑われてるのかな?
ちょっと眠れないので、散歩に行こうと思って・・
そうですか。 今日は満月ですが、外はあまり明るくないので気を付けてください。
危ないですから、くれぐれも遠くには行かないでくださいね。
はい、分かりました。
(あちゃー これじゃ地下室になんて行けないよ~)
なんとなくだが、この後のあたしの行動がリリーさんに監視されそうな気がする。
この後、地下室に行けないなら、明日の朝一番で写真を元通りにしておかないとまずいだろう。
しかも、リリーさんが朝食の準備をする前に、終わらせておかなければならない。
これは結構早起をしなければならない。 あたしは、朝起きるのが苦手なので気持ちが暗くなった。
仕方がないので、ちょっとだけ散歩しましたの体でお茶を濁して、早く眠ろうと外に出るとそこには・・・
次回へ続く・・・
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