第279話 ◆へっくしょっ

◆へっくしょっ


夕食後、リリーさんが調理器具や食器を片づけて自分の部屋に戻ったのを確認したあたしは、そっと地下室へ通じる階段を下りた。


灯りを付けると見つかる可能性があるので階段を10段くらい手探りで下りたあと、数少ないあたしが使える魔法で指先から小さな炎をだした。


ちょろちょろと燃える蝋燭のような炎で、探検しているような気分になってくる。


地下室は、食材やお酒などの保管庫になっているようだ。


地下室は空気がひんやりしているので、全裸に鎖の体にローブ姿では少々肌寒い。



へっくしょっ


あっ、あれが現像液を入れるトレイかな?  


近づいてみたらどうやらビンゴのようだ。


そのトレイが置いてある棚の上に張られたロープに写真がたくさん止められて、まるで万国旗のようだ。


手前の写真を1枚取って、指先から出ている炎を近づけてみて、あたしの顔は途端に引きつった。


なんじゃこりゃー!


これじゃまるで、A〇女〇みたいじゃないの・・・  ほ・・ほかの写真は・・・


ぎゃーーー  


気が付けば、あたしは悲鳴をあげながら、そこに吊るされていた写真を残らずビリビリに破いていた。


はぁ はぁ・・


こ、これはネガを探し出して、きっちり処分しておかないと大変なことになってしまうわ。


もし、こんな写真をばら撒かれでもしたら、あたしの人生は終わってしまう。


はっ?  まさかサリエルさんが、あたしのこの世界への未練を断ち切るために利用しているってことは無いよね。


疑心が疑心を呼ぶ。 妄想が被害妄想を募らせる。



そうだ!  ネガはいったいどこにあるんだろう?


現像したということは、この暗室にネガが保管されてる可能性が高いよね。


ネガを探そうとして、横にある棚の方へ移動しようした時、


バタン とキッチンの戸を開け閉めする音が聞こえて来た。



まずい、誰か上にいる。


あたしは、床に積んであった食材が入った箱の陰に身を隠した。


足音は、だんだんこっちに近づいて来るようだ。


まさか・・  心臓がバクバクしてくる。  小さなころに、かくれんぼをしていて鬼が近くに来た時を思い出す。


パタッ  パタッ  パタッ


わわっ 階段を下りてくるー


ちらっと横の床を見れば、さっき破り捨てた写真が散乱している。


もし、人が近くまでくれば絶対に気が付いてしまうだろう。



まさにセレネは絶対絶命の状況なのに、次回へ続いてしまうーーー

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