第275話 ◆別荘と怪しいメイドさん

◆別荘と怪しいメイドさん


あの~ ヴォルルさんですよね?


いいえ、違いますよ。  昔からよく似ているって言われるんですけどね。


ほんとうですか?


ええ、ただ空似です。


そう、別荘であたしの面倒をみてくれているメイドさんが、ヴォルルさんにそっくりなのだ。


ここまで似ているのは、本人しかありえないってくらいで、かなり怪しい。


まあ、別にメイドさんが、もしヴォルルさん本人だったとしても困ることはないのだけれど、ちょっと気になる。



でも、別荘最高!  空気はおいしいし、きれいな海を見ながらビーチベッドに横になって、潮風に吹かれる。


なんて贅沢な過ごし方なんだろう。



セレネさま、トロピカルジュースをお持ちいたしました。


ありがとう、ヴォルルさん。


いやですわ、あたしの名前はリリーですよ。  百合のリリーです。


ごめんなさい、つい。  あと、その自己紹介の仕方、気を付けた方がいいと思います。


こうして、あたしはときどきメイドさんがヴォルルさんでないか確かめる。


なぜかといえば、呪いの金の鎖のせいで、あたしは下着が着れない体だからだ。


つまり恥ずかしい話し、全裸に金の鎖をグルグルと巻いている変態お姉さんなのだ。


この状況をあのヴォルルさんが、あっさりと手放すはずがない。



しかも、この鎖が1円玉くらいの大きさの輪で出来ていて、結構な重さなのである。


このせいで下着が着れないだけでなく、普通の服も着れない。


だからこの別荘に来てからは、人目がないためほぼ全裸で過ごしている。


でも全裸と言っても鎖が大事なところを隠してくれているから、めちゃくちゃ恥ずかしいわけではない。


それに裸でいると結構リラックスできることも分かったけれど、これに慣れてしまうと元に戻れなくなりそうでちょっと怖い。



別荘に来てからは、メイドのリリーさんしかいないので、余計なことも考えず鎖の絞めつけもなくなって良い感じだ。


もしツンデレのアリシアが一緒にでも居たら、あたしの体は1日でこの鎖に引き裂かれていただろう。



う~ん、 それにしても美味い。  このジュース、向こうの世界で販売したらメガヒット間違いないわ。


あたしの商売人魂が久々によみがえる。



きらっ


あたしが、ビーチベッドでジュースを飲んでいると別荘の2階のテラスで何かが光った。


光った方を見るとリリーさんが、こっちを見ている。


最初は掃除でもしているのかと思ったのだけれど、手に筒状の大きなものを持っている。


あれはいったい何なのだろう。


そして、それが分かったのは、数日後のことだった・・・


ちょっと気になるが、次回へ続く・・・

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