第263話 ◆再出発
◆再出発
モモちゃんの件も良い方向へ進み始めたし、あまり長居するのも気が引けるので、そろそろ出発する旨をモモちゃんたちに伝えた。
そうしたら出航するにあたって、またこの船の経歴で誤解を生まないように、人魚族の旗をマストに付けてくれた。
しかも永久会員用をなんと無料でだ。 これは超ラッキーだった。
たしか永久会員用なんて、あのモッフルダフだって買えないほど高額のはずだ。
・・・
メイアとシルフにも明日は出発するよと念のため繰り返し言っておく。
なぜならメイアはお魚をくれる人魚のおじさんと別れたくないようだし、シルフはここの果樹園でとれる果実がえらく気に入っているからだ。
シルフを魅了する果実は、猫に木天蓼マタタビのようで、この実を食べたシルフは、やたらセクシーになる。
メイアには、だったらここに残れば? とからかうと ほっぺたをぷっくりさせてムゥーと言ってむくれた。
シルフには、この果実を樽いっぱい買ってあげることにした。 種は取っておいて家に帰った時に植えてみようと思う。
メイアには、出航間際に人魚のおじさんがメイアちゃんにとお魚をたくさんくれたので、冷凍保存してあげた。
・・・
モモちゃんのお見合いについては、アリシアのアホな発言が良い方向に転がって感謝されたし、アリシアの心も天使のように浄化された。
なのに、あたしは心にポッカリと穴があいたような気持ちだ。
そう、アリシアはやっぱりツンデレでなくっちゃいけない。
だけどけっして、あたしがドMという事ではない。
明日は出発するのだが、当初まだ未踏の地を冒険してみようと思っていた計画が狂ってしまった。
ほんとうなら、セレネ王国から海岸線を北上して大陸の様子を見て回りたかった。
しかし、アリシアのことが心配(半分面白い)なので、前にモッフルダフから買った世界地図を頼りに最短コースでララノアに会いに行く。
船のエンジンである巨大のこぎり鮫のノコッチ君は、フィアスやクジラ君のようなスピードは出せないので、モモちゃんのお父さんから補助エンジンとして鯱しゃちの兄弟を借りた。
目的地に着いたら、牽引ロープを外すだけで勝手に宮殿まで戻ってくると言っていたので、安心して借りられる。
これなら、ノコッチ君の負担も減るので速度も上がり、かなり早くエルフの里にも着けるだろう。
・・・
そして当日は、なんだか盛大なお見送りを受けてしまった。 まさかの音楽隊まで現れたのにはびっくりした。
まるで国賓並みで流石に恐縮してしまう。 あたしがセレネ王国を建国したのは特に話していないのにだ。
しばし別れを惜しんだ後に、来た時同様に大渦が巻き起こり、船は海面へとグイグイと上昇していった。
ザバァーーン
船が勢いよく海面に飛び出して上下に大きく揺れた。
海鳥がマストの上の青空を南に向かって飛んで行く。
一瞬強めに吹いた潮風が頬に心地よい。 やっぱり海の上もいい。
こうして、あたしたちは新たな気持ちで大海原へと乗り出したのだった。
次回へ続く・・・
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