第258話 ◆深海でアリシアをからかう

◆深海でアリシアをからかう 


大渦に引き込まれて、船はどんどん海底へと引きずり込まれていく。


やがて、陽の光がまったく届かない深海の世界となった。


あちゃー 何もできないまま海の底まで来ちゃったみたいだ。


ここまで来ると、もの凄い水圧のはずなので、やたら脱出しようなどと考えない方がいいだろう。


それにしても、この後どうしたものかと考えていると、船が海底をゆっくり進みだした。


どうなるか分からないけど、ここは騒いでも仕方がない。



セレネ、いったいこれはどういう事なの?


そんなの聞かれたって、あたしにだって分からないよ。


まったくセレネは、いつも役に立たないわね!



船の回転が止まったので、アリシアが回復してきた。


本音を言うとアリシアには悪いけど、もう少しへばっていて欲しかった。



セレネ、前を見る。


シルフの声で、船首の方に視線をうつせば、前方がぼんやりと明るい。


みんな、気を付けて!


あたしの声に、メイアとアリシアもあたしの傍にピタリと寄り添う。


うひゃひゃ こら、二人ともへんなところ触らないで!


まったく緊張感がないわね。 いま、自分が気をつけろっていったばかりじゃない!


だって・・・


しっ!


あたしの頭の上に乗っていたシルフが、何かを見つけたらしい。


セレネ、周りに何かいる。


えっ?


慌てて船の周りをキョロキョロ見回すが、真っ暗なので何も見えない。


シルフ、ほんとうに見えたの?


前の明るい方を見て。


げっ!


あれは・・・ もしかして・・ 人魚?


やがて前方が徐々に明るさを増して、人魚の姿がハッキリと分かるようになった。


それにしても凄い数だね~。


ほんとう、人魚は久しぶりに見るわね。  でもなんで人魚が?


う~ん  ひょっとして、アリシアが前に氷漬けにしたから復讐に来たんじゃないの?  (151話を見てね)


ギクッーーーー


ほらっ、やらかしといて謝りもせずトンズラしたじゃない。


あ、あの時は、凍らせる魔法しか知らなかったのだから、仕方がないじゃない!


ほんとうにコリン君がいなかったら、どうなっていたことか。  


う、うっさいわね!  昔の事をうじゃうじゃ言うのは年寄りの証拠よ!



ドッスン


アリシアをからかっていたら、船が何かにぶつかって止まった。


あ痛ーーー


セレネ、来たーーー   メイアがあたしの服の裾をぎゅっと引っ張る。


見れば、人魚族の男たちが銛を構えて、ぞろぞろと船に上がって来るではないか。


これは、久しぶりにヤバイかも・・・



次回へ続く・・・

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