第252話 ◆海賊現る

◆海賊現る


セレネ王国の人口も既に3,000人を超え、さらに増え続けていた。


農業を希望する人たちには、区画整理された田畑が提供され、しかも1年目は育てたい苗や種も支給される。


畜産希望者にも、あらかじめ国営農場で育てた家畜から何頭かがもらえるのだ。


その人たちが収穫したうちから、次の開拓者へまた無償で提供する仕組みが自然と出来ていった。


また温暖な気候に恵まれ、果樹園が好調でおいしい果物がたくさん収穫できた。


どの果実も、どこで食べた物よりもジューシーで美味しかった。


これは、この国の特産品にできるだろう。


それに税金も最初の3年間は免除だし、一定の収入額までは無税とした。


何もかもが順調だった・・・


・・・


ある日のこと、沖合に見慣れない船団の影が見えているとの一報が入った。


みんなは当然のように移民船だと思ったのだが、一向に港に入ってくる気配が無い。


あたしは不審に思ってメイアに乗って様子を見に出かけた。



上空から確認すると、船は3隻で1隻は見たこともないくらい大きな船だった。


メイア、もう少し船に近づいてくれる。


オッケーなの。


最近友達から覚えた変な言葉を使って返事をしたメイアは、ゆっくりと旋回しながら高度を落としていった。


あ、あれは・・・


船の上には乗組員らしき姿が見えたが、それは全てがアンデッドだったのだ。


これはヤバイ!  こいつら魔物の海賊船じゃないか。


こんなのに攻めてこられたら被害甚大だ。


セレネ王国には、まだ軍隊は無い。  平和ボケと言ったらそうかも知れない。


魔物が居ない土地だったので必要性を感じなかったけど、こういう事態も想定しておかなければならなかった。


直ぐに対策を取らなければ、まずい事になる。


メイア、急いで戻ろう!


オッケーなの~。


ガクッ メイアーそれ緊張感なさすぎ!



・・・


あたしたちは戻ると直ぐに、みんなを集めた。


移民の数が圧倒的に多い「まりあ王国」の大使であるリアムとエイミーももちろん呼んだ。


みんな、よく聞いて。


沖に浮かんでいる船団は、どうやら海賊みたいなの。  しかも乗組員は全員アンデッドだった。


なんですって!  それは本当なのセレネ?


アリシアの目がキラキラしているように感じるのは気のせい?


やれやれ、ヴォルルさんも居ないし、もし総攻撃を受けたら大苦戦間違いなしですね。


コリン君が顔をしかめて言う。


念のため住民には、この頑丈な家に避難してもらおうよ。


でも、全員は無理じゃないの。


うん、もちろん子供と女性を優先して、男の人には警備を手伝ってもらおうと思う。


久しぶりに腕が鳴るわね。


エ、エイミー。 あなたは、もうお母さんなんだから戦闘はダメよ!


えーーー  それじゃあ、後方支援だけでもお願い。  こっちに来るときに武器もいっぱい持ってきたのよ。


エイミーってば・・・


俺も愛剣は持って来たぜ。


リアム、あなたの国の男性で軍隊経験者がいたら、ここに集まってもらって欲しいの。


OK、任せとけ。


ここに船で上陸するなら唯一の港か、ボートで上陸してくる場合は浜辺のどちらかだと思う。


船なら艦砲射撃の可能性が高いから、こっちも大砲で防戦になるわ。


でも、大砲は2門しかないんじゃなかった?  玉もそんなになかったようだし。


ふふふ こちらには、シルフ様がついていらっしゃるのをお忘れかな?


でも、シルフはスタミナ切れが心配よ!  アリシアがシルフの弱点を指摘する。


そうね。  だから今のうちに、たらふく食べさせてスタミナをつけておくのよ。


浜辺の方は、悪いけどリアムたちに守って欲しいのだけど大丈夫かな?


おぅ、任せてくれ。  こう見えても女王様の親衛隊だったんだぜ!


状況に応じて、あたしとメイアが応援に行くわね。


アハハ メイアちゃんが来てくれるなら、鬼に金棒だな。


最弱セレネは役に立たないけどね~。  アリシアがにんまり笑って茶化す。


まぁ、確かにあまり役には立たないので、今回は張り合わずに黙っていた。


それじゃ、戦闘準備にかかるわよ!


おおぅ!


次回へ続く・・・

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