第250話 ◆妖精の国 その7
◆妖精の国 その7
ほぼ1日が過ぎたころ、ようやくアリシアがコリン君を連れて来た。
事情は来る途中にアリシアが十分説明していたので、コリン君は早速辺りに魔法がかけられていないかを調べ始めた。
川に落ちている水晶をたくさん拾って来て、色々な方向に魔力を使って順番に飛ばして行く。
コリン君、これって何をしているの? あたしは不思議に思って聞いてみた。
ああ、これですか。 元の位置に戻ってしまう魔法がかけられていたら、ここの住人はどうなります?
そりゃ~不便っていうか、それこそ何処にも行けないし死活問題ね。
なら、ここの住人はどうすると思いますか?
う~ん、あたしなら抜け道を作る・・・ あっ、そうか。 そういうことね。
そう、正解。
出発点に戻るなら、ここの空間に違った方向へ抜ける穴が開いていると思います。
これはあくまでも僕の考えた結論ですけどね。 そして妖精は空を飛べる。
そっか、高いところに抜け穴があるんだね。
おそらくそうだと思います。
この推理が当たっていれば、水晶を飛ばして反対側から戻って来ない場所が抜け穴です。
それって、水晶を500m以上飛ばせないといけないのね?
そうです。 アリシアさんとメイアさんなら、十分可能ですので分担を決めて片っ端から潰して行きましょう。
で、非力?な、あたしは川へ水晶を取りに行って補充する担当を買って出た。 と言うか、これくらいしか役に立たない。
確認作業は、思った以上に時間がかかった。 なぜなら、水晶を一つ飛ばす毎に元に戻ってくるか来ないかを確認しなければならないからだ。
それに、戻って来る時は高さの違いはあるけど同じ地点に戻って来るので3人は少しずつ投げるタイミングをずらす必要があったのだ。
休憩時間には、コリン君が持って来てくれたサンドイッチやおにぎりを食べた。
シルフもお腹を減らしているだろうな。
あたしがふざけた所為でこんなことになってしまって、ほんとうに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
・・・
抜け穴は水晶を投げ始めてから2時間が過ぎたころ見つかった。
メイアが投げた水晶が戻って来なかったのだ。 そして抜け穴は、予想以上に高いところで発見された。
これは、予想以上に高いですね。
なぜこの地では、妖精族が滅びずに繁栄出来ているかが、分かった気がした。
それは、この抜け穴の仕掛けで天敵の侵入が出来ないようになっていたからに違いない。
・・・
みんな、行くわよ!
メイアの背中に、アリシア、あたし、コリン君の順で跨って、抜け穴に飛び込んだ。
あっ、セレネ。 ほらっ、あれ。 あそこにシルフが居る!
飛び込んで直ぐに、アリシアが大声で叫んだ。 やっぱり洞窟は、そんなに大きくなかったんだ。
アリシアがゆび指した方を見れば、シルフが大勢の妖精たちを相手に大暴れしている。
シルフってば、なかなかやるじゃん。 最初に会った時は、二人とも自分たちがこんなに逞しくなるなんて思ってもみなかった。
あたしもシルフも泣き虫だったけど、冒険の旅でいろいろな経験をしてお互いに強くなったんだな。
さあ、みんなでシルフを助けるよ!
メイアが妖精たちの輪の中心にいるシルフ目掛けて急降下する。
イヤッホーーーーーッ!
頭上から突然現れたドラゴンに妖精たちは、たちまちパニックを引き起こす。
メイア、一発派手にやってあげなさい!
グワォーーー メイアが威嚇のために大火炎を吐き出す。
ゴォォォーーーー
妖精たちは、超高音の甲高い悲鳴をあげて、散り散りに逃げ惑う。
メイアがシルフに接近。 あたしの伸ばした手にシルフの手先が触れた。
あたしは、そのままシルフの手を掴み引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
シルフ、遅くなってごめんね。 怪我はない?
だいじょうぶ。 それよりセレネ、あとで話がある。
うひゃーー ごめんなさいーーー
あたしたちはそのまま急上昇し、入って来た抜け道を通って洞窟を後にしたのだった。
次回へ続く・・・
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