第249話 ◆妖精の国 その6

◆妖精の国 その6


メイアはシルフの匂いを追っていた。


嗅覚を最大にするため姿をドラゴンに変え、セレネとアリシアを背中に乗せ、上空からの探索を開始したのだ。



セレネ、ここって思ったより広いわね。


うん、とても洞窟の中とは思えないわ。


メイア、シルフの匂いは消えてない?


だいじょうぶ~


よかった。  それならすぐに見つかるね。


そうね。



ところがこれが甘かった。  行けども行けども辿り着かない。


もう、かれこれ3時間は飛んでいるだろう。



ねえ、セレネ。


うん、おかしいわね。


洞窟がこんなに広いわけがない!


メイア、いったん降りよう。



地上に降り立つと、早速その理由が判明した。


セレネ、これ見て!


やっぱり・・・


アリシアがゆびを指した先には洞窟に入った時に使った先が焦げた松明の枝があった。


つまりここは、ほぼ出発地点ってことね。



セレネ、これは何がしらかの魔法がかけられているのよ。


わかってる。 その魔法を破らない限り、いつまで経ってもここを堂々巡りってことだよね。



シルフは大丈夫かしら。 アリシアが心配そうな顔で言う。


今のところは、命に危険はないと思うけど早く探さないとね。


でも、いったいどうやったらこの厄介な魔法を破ることが出来るのだろう・・・


あたしは、焦り始めていた。



ねぇ、コリン君ならこの魔法を何とか出来るんじゃない?


そうかも知れない。 ここで無駄に時間を費やすのなら、家まで往復してもその方がいいかもね。


アリシア、やるじゃん。 


ふふん、あたしが本気をだせば、こんなものよ!  もっと褒めたたえなさい。


いや、まだ問題は解決されてないから!




それじゃ、アリシアはメイアとコリン君を連れて来てくれる。


セレネはどうするの?


あたしはシルフが心配だから、ここでもう少し調べてみるわ。


それじゃ、行って来る。


うん、お願い。 気を付けてね。



アリシア達がコリン君を連れて戻って来るまでには、どんなに急いでもまる一日かかるだろう。


それまでにあたしが出来ことは、全てやっておこう。


まずは、地面に目印をつけながら歩いて行けばどうなるかね。


あたしは地面に転がっていた松明に使った枝を拾い、川に沿ってそれで地面を擦りながら歩き始めた。


振り返れば、一本のスジが地面に付いている。


これは、当たりだった。  歩き始めてから500mくらいのところで、前方にあたしが付けたスジが見えて来たのだ。


うわっ、気持ち悪っ!  これって、まるで球体の上を歩いて一周してきたみたいじゃん。


まてよ?  もしかしたら本当に球体なのかも知れない。


あたしは、頭の中で洞窟の中にまるく浮かんだ球を書いてみた。


う~ん。 重力があるからやっぱりこの仮説は成り立たないかなぁ・・・



で、もう一回。  今度はさっきとは直角方向に歩いてみる。  つまり川を渡って十字に歩くのだ。


そして結果は、やはり同じだった。  500mくらい歩いて行くと前方に出発地点が見えてくるのだ。


しかも、ズレることなく正確に目の前に現れる。 これはやはり、何らかの魔力が働いているのだろう。


もしかしたらこの洞窟のホールは半径500mぐらいのドーム状なのかも知れないぞ。 それ以上先に行けないから振出しに戻るみたいな。


いろいろ、浮かんできたので、腰を下ろして頭の中で整理してみる。


う~ん  やっぱりアリシアがコリン君を連れて来るまで待つしかないかぁ・・・



あたしは、その後もいろいろ考えたり、歩き回って調べたりしたが、とうとう万策尽きたのだった。



次回へ続く・・・

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