第245話 ◆妖精の国 その2

◆妖精の国 その2


シルフは最初、いったい自分の身に何が起きているか分からなかった。


ただ、自分の意思とは関係なく飛んでいる・・ いや、飛ばされている。


前方を見れば、ひきつった顔の妖精たちが目に入って来た。


これはまずい!


少々コミュ症気味のシルフは、この状況にパニックを引き起こす。


相手が、にこやかな笑顔でも緊張するのに、あの形相では自分は到底手に負えそうにない。



セレネはヴォルルさんから魔力を分け与えられたため、普通の人間の力では考えられないくらい身体能力が高くなっている。


自分は、しばらくの間飛ばされ続けるだろう。



シルフは投げられる前に聞こえたセレネとアリシアの会話のやり取りがはっきり分かって来た。


あとで、アリシアとセレネに罰を与えなければならない。



ビュン


シルフは一瞬で妖精達の間を抜け、なおも飛び続けた。


いったいどこまで飛んで行くんだろうか。  でも、妖精達とコンタクトしなくても良くなった状況にちょっと安心もしていた。




・・・


セ、セレネったら、ほんとうにやるとは思わなかったわよ!


だって、あたしは二等兵なんだから上官殿の命令は絶対だよ。


ごっこじゃない!  ただのごっこ遊びじゃない!  どうしていつも意地悪するの?


だってさ、それはアリシアのツンデレキャラがカワイイからじゃないの。


ぐっ・・


大好きだよ、アリシア。


グキャーーー


ふっ こいつちょれーーー   ←心の声デス  



・・・


突然セレネに分投げられたシルフであったが、ようやくセレネの馬鹿力の勢いが衰えて来たのか落下し始めた。


そろそろ広げても羽を傷めないで済みそうなので、畳んでいた羽を広げ自力で飛び始めた。


セレネ、たまにあたしにひどいことする。  お仕置き必要。


距離にして1kmは、飛ばされただろうか。


シルフはすぐさまクルリと180度ターンして元来た方へ向かう。


すると前方では、いつの間に増えたのか妖精の大群がシルフの行先を塞いでいた。


!! これはマズイ。  みんなセレネが悪い。



・・・


セレネやアリシアが見る限りでは妖精たちの顔は、みんな同じにしか見えない。


これは例えるならば自分たちが、ミニチュアダックスフンドを見た場合、ぱっと見みんな同じに見えるのと同じだ。



ねぇ、セレネ。  状況が悪化してるように見えるんですけどぉ・・・


そだね。 ちょっと、やり過ぎたかなぁーーー


この責任は、上官であるアリシア隊長殿にあると思いまっす!  よって、事態収拾の作戦をご指示くださいっ!



えぇっ  な、なんでーーー!


ぶぶっ  反応が超かわええーーー  ←心の声デス



この時、あたしは面白がっているだけだったが、この後事態は急展開するのだった。



次回へ続く・・・

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