第240話 ◆怠惰なアリシア

◆怠惰なアリシア


可哀想だったけれど巨大蟻を退治し、新たに開拓に着手してから既に3ヶ月が経った。


新しく作り直したマイホームは、堅牢な巨石造りでエクステリアにもこだわったコリン君の設計でちょっとしたお城のようだ。


今は壁面を大理石で覆ってゴージャスにしようと取り組んでいる。


これは、セレネ王国に移民の人々を招きいれる際のことを配慮しての取り組みだ。


せっかく苦労してやってきた人たちが、この立派な建物をみれば安心するだろうし、その後の開拓にも力が入る。



水車も3基作った。


発電用、粉引き用、マイホームのポンプの動力用だ。


ポンプ用はアリシアの「お風呂でシャワー」リクエストの実現のために、わざわざ小型の水車をコリン君が作ったのだ。


あの我がまま娘のために・・・



畑も作った。 こっちはヴォルルさんが圧倒的魔力を使って、あっと言う間に広大な面積を耕し、今は野菜や小麦を育てている。


お酒が飲みたいヴォルルさんは、これからブドウ畑も作るらしい。


そしてあたしは、やっぱりお米が食べたいので、これから川の傍に水田を作ろうと考えている。


それにお米が出来れば、ヴォルルさんに日本酒も作ってあげられるだろう。




今後の都市計画というと大袈裟になるけど、移民の人が行き来するための道路も作っている。


平安京や平城京のように碁盤目状に広い道を通して、1区画ごとに土地を割り当てるのだ。


水路も道路と平行して上下水道を作れば、水に苦労しないで開拓を進められる。


この土地の気候はまだ把握しきっていないけれど、必要ならダムも作らなければいけなくなるだろう。


道路関係は、ニーナとメイアが担当している。  頭脳とパワーの最強の組み合わせだ。



そして、アリシアは怠惰だった。


アリシアの担当は自ら志願した国土調査にもかかわらず、いつまでも調査に出発しようとしない。


毎日、食っちゃ寝の生活が1ヶ月続き、お前いたい誰だと言うくらいに太った。


家の中に大きな鏡でもあれば、本人もここまでは太らなかっただろう。


まあ、アリシアが太ったのは、みんなが労働で疲れると甘いものが欲しくなるだろうとコリン君がケーキやお菓子をたくさん作ったのもいけない。


調査に出かけるとあたしだけおいしいものが食べられない!  これは差別よっ!


とか言い始めて、この始末だ。


同行する予定だったシルフも最近ではすっかり諦めて姿も見せない。



アリシアさん、いい加減にしないと取り返しのつかない体系になるわよ!


だって、今日はコリン君がチョコレートケーキを作るっていってたし、出発は明日以降でも問題ないでしょ!


アリシア、それ昨日も言ってなかったっけ?


もぅ、うるさいわね!  セレネだって毎日おやつ食べてるじゃない!


ってか、あたしはその分ちゃんと労働してますから、食べても太りません!


だって、あたしだけ遠方調査だなんてずるいじゃないの!!


おや~?  一番楽そうだからって最初に立候補したのは、どこのどなたでしたっけ?


だ、だって、あの時はコリン君がおやつを作るなんて知らなかったんだもの!


はいはい、それじゃあ明日出発ってことで、今夜はみんなで壮行会を盛大に開いてあげるからね。


ぐっ・・・



あたしは、意地悪をしているんじゃない。


このままでは、アリシアのためにならないから、これ以上グズグズと怠惰な生活をさせないために追い込むのだ。


へへっ  ←この笑いはいまの発言内容の信頼性がゼロ。



そして次の日、アリシアは肩を落としながら、渋々調査に旅だったのであった。



次回へ続く・・・

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