第230話 ◆カミナリ様と避雷針

◆カミナリ様と避雷針


この大陸は、いま真夏である。


しかも太陽の周りを楕円形に公転しているとかで、想像以上の暑さだ。


で、いまはプールに来ている。


アリシアは日焼けオイルを塗って転がしておいたので、夜になったら発見できないくらい真っ黒に日焼けした。


ヴォルルさんとキャロンさんも日光浴をしていたけど、大人なので途中からパラソルの下に移動し、ちょうどいい焼き加減?になっている。



そして、問題児はコリン君だった。


パレオ付きの水着と水着用パットのマ●タ君で偽装したAカップでプールサイドを歩いているうちに、大勢の男に囲まれてチヤホヤされて目覚めてしまったらしい。


コリン君、それってナンパだから・・・


でもどうして男の娘がモテて、女のあたしがモテないのだろう・・・  ちょっと悲しくなった。



それにしてもパレオの下は、それなりに男のはずだし、バレルのも時間の問題じゃないか?


あたしは、もしそうなったら面白いので、少し離れたところから観察して楽しむことにした。


コリン君はお母さんがエルフのハーフで、顔は可愛らしく見た目は女の子そのものだ。


色白で華奢な体つきということもあり、初めて会った時はあたしも男の子だとは微塵にも疑わなかった。



いつバレルか、こんな観察するTV番組があったなぁっと、思っていたら。



ねぇ、彼女。  少し泳がない?


えーーっと。 ごめんなさい。  あたし泳げないから・・  コリン君も流石に困り始めたようだ。



ププッ


泳げないですって。  それ、うそですから。  本当は、あたし達の誰よりも泳ぎ上手いですよ~。



泳げないなら、俺が教えてあげるよ。


あっ、そいつより俺の方が、泳ぎうまいっすよ!


そう言いながら、二番目の男子がコリン君の腕を引っ張る。


ちょっ!  手が痛い。    



おい、俺が最初に教えるっていったんだぞ!


うるせぇ、そんなの関係ないだろ。  ねえ、彼女、俺の方がいいだろう?


おい、その娘は、俺が最初に声をかけたんだからな!  違う男子がコリン君のもう片方の腕を引っ張る。



あらあら・・ これは一波乱あるかな?  あたしは、すこしドキドキしてきた。



ゴゴゴゴゴーーー


あっ コリン君、ついに怒りモードに入ったか?


辺りは俄かに黒雲が立ち込め始めた。 


ビシャ  ビシャ  ビシャーー  ドバーーーッ


うひゃぁ  凄い雨ーーー


これは、コリン君の魔法じゃなくて、本物のスコールだぁ!


痛い 痛い 痛い  雨なのに痛いーーー



ピカッ


バアーーーン


ギャーー  カミナリ怖いーーーー


あたしは屋根がある場所に避難しようと駆けだしたが、ふと振り返ればコリン君も取り巻いていた男子達も全員倒れているではないか。


きっとさっきのカミナリの所為だ。



あたしは急いで引き返すとコリン君をおぶって、屋根のあるフードコートまで運ぶ。


歩くたびに、なにやら変なものが背中に当たってるような気がするんですけど・・・



フードコートの真ん中まで運び、サマーベッドの上によいしょっと降ろす。


コリン君、コリン君、しっかりして!


息をしているか確かめる。


近づいた顔の長い睫毛とピンク色の唇に思わずドキッとする。



う、ううん


あっ、気がつい・・  か・・かわいい・・


もう、コリン君って、なんでこんなにカワイイのかな。  女のあたしだって襲いたくなっちゃうぞ!



ピカッ


ピシャッ  バアーーーン


その時、また近くに凄いのが落ちた。


キャーー


思わず耳を塞いでコリン君に覆いかぶさる。


あ゛ーーー  怖かったーー


ってか、コリン君ってば避雷針を立ててるんじゃないわよ!  ここに落ちたらどうするのよ!



だって、セレネさんがそんな恰好で覆いかぶさるからでしょう。  しかもビーチタオル落としてるし!


そうでした。  ごめんなさい。


ビキニの上をウォーターシュートで飛ばしてしまったので、ビーチタオルを撒いていたのを忘れてました。


暴言を吐いて、ごめんなさい。



この後、スコールが益々酷くなったので、あたし達は泣く泣くプールを後にしたのだった。

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