第226話 ◆情熱大陸?

◆情熱大陸?


第十二部


九条セレネ・オウゼリッヒは、暑がりの汗っかきである。


だから日本の夏が大嫌いだった。


夏の間の通学は、なるべく汗をかかないように、ドラキュラのように日影を避けて歩いた。


一度遅刻しそうな時に弱冷車に乗ってしまい、発狂しそうになったこともある。


次々に乗り込んで来る乗客の波にのまれ、車両の奥へ押しやられ、学校の最寄駅についた時は制服のままプールにでも飛び込んだかのような有様になったのだ。


有事を想定し、着替えを持っていたからいいようなものだが、通学途中はスケブラで超恥ずかしかった。


そして、第二の大陸は暑かった・・・


・・・


あっちぃーーー!


なによ、この暑さは!  もう、さいっあく!


気温はおそらく35℃を軽く超えているだろう。 そしてまだ、陽は昇ったばかりなのだ。


これから、太陽が真上に来ようものなら、いったい何度になるのだろう。


あたしは、北半球と南半球では季節が逆になるという、自分の住んでいた世界の常識をすっかり忘れていた。


ねぇ、モッフルダフ、こっちは もしかして今夏なの?


ホッ ホッ ホッ


セレネさんは、夏が苦手ですか?


質問の内容と違う答えに、イラっとする。


夏もモッフルダフも大っ嫌い!


おやおや・・


モッフルダフは肩をすくめて苦笑いをしながらも、話をつづけた。


確かにこっち側は、いま夏ですが、この星は太陽の周りを少しだけ楕円軌道で回っているのです。


・・・


セレネさん、公転とか自転とかはご存知ですか?


あーーー 知ってるーー   暑すぎてだるいーーー


つまり、いまは夏の季節に加え太陽に近いってことだよね。


はい、その通りです。


ねえ、着いて早々なんだけど、早く涼しいところに行こうよ~。  どうでもいい理科の話しを切り上げる。


はいはい。 それでは、よい所にご案内しましょうか。


・・・


で、モッフルダフがみんなを連れて来てくれたところが、お決まりのプールだった。


あたしの体は、ヴォルルさんに魔改造されてしまったので、あまり水着姿にはなりたくない。


でも、こんな機会をヴォルルさんが逃すわけもなかった。


こんなこともあるかと思って、セレネちゃん用に水着をたくさん持ってきたのよ。 わたしが選んであげるわね~。


ってか、ヴォルルさん、紐みたいなやつとか透けるのは絶対にダメですからね!


ああ~ん せっかくのナイスバディなのに・・・


ちっ、やっぱり先に釘さしておいてよかったぜ!


で、感じんなあたしのサイズに合う水着が無い!  なんなのよ・・・わざと?


でも、暑さには勝てなかった。


あたしは、下乳が見えてしまう恥ずかしさ満載の黄色いビキニを着てプールサイドに立っていた。


これって羞恥プレイですかね?


ただし、ヴォルルさんやニーナと一緒に並んで歩いていると、視線がその二人に集中するのが少しだけ悔しい。


乙女心は複雑なのだ。



コリン君は悪魔の契約で、パレオ付きのかわいいビキニを着ている。


もちろん、水着用パットのマ●タ君を装着しAカップ偽装をしている。


しかも見た目が超絶カワイイので、貧乳ファンが群がっているのがまた悔しい。



アリシア?  ふふん  や~い ペッタンコ~



メイアは、またも張り合ってグラマーなお姉さんに変化した。


あっ、それってお風呂で変化した時※のお姉さんじゃん。  ギャハハッ  超うける~!    (※70話 メイアの暴走 参照)



水の中に入っていると体がひんやりして気持ちがいい。 


しかも真水だ。  水から上がっても髪も体もベタベタしないのに感激する。


・・・


ふとアリシアを見ると元気がない。  プールサイドにしゃがんで、タイルを指でグルグルしている。


はは~ん。 みんながバインバインなので、しょぼくれてるのか。


仕方がない。 いっちょ遊んでやるか~。



アリシア、あのウォーターシュートか隣りのスパイラルスライダーのどっちかで勝負しよう!


負けた方が今日一日勝った方の奴隷でどうだ?


こういうのにアリシアが喰いつかないわけがない。


案の定、 セレネ、百年早いわ。 やる前からあたしが勝つのが分からないの! と来た。  キタ、キターーーーー! ←心の声デス


そして、この後あたしはアリシアを挑発したことを激しく後悔するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る