第225話 ◆ヴォルルさん、航海について来る

◆ヴォルルさん、航海について来る


ヴォルルさんが、あたしのことを好き過ぎて暴走してしまった。


これはもう百合なんかの一言では済まされない。


なにしろ、あたしを心配して塔の上を旋回していたメイアが、ヴォルルさんに攻撃されてしまったのだから。



ヴォルルさん、メイアに何ていう事をしてくれたんですか!  あたしはヴォルルさんを睨みつける。


だ、だって、セレネちゃんを奪い返そうとしてたし、メイアちゃんはドラゴンで強いから、最初に眠らせて置かないと後が面倒だったのよ。


眠らせるって・・・ じゃあ、メイアは眠らされて落ちたって事ですか?


そうよ。 わたしが悪い魔女みたいに酷いことをするなんてあるわけないじゃないの。


でも、ゴンッって言ってましたし!


あら~ ドラゴンは、そのくらい痛くも痒くもないわよ。  セレネちゃんてば、気にしすぎ。  そんなんじゃ、この世界では生きて行けなくてよ。



ヴォルルさん。 そんなことより、あたしをみんなの所に帰してください。


それは絶対にいやよ!  そんなことしたら、わたしはまた独りぼっちになっちゃうじゃない。


グスッ グスッ


ああっ  また泣きそうになってる。  ヴォルルさんが泣くと子供みたいになって、手に負えなくなる。



あたしは困ってしまい、咄嗟にある提案をしてしまった。


ヴォルルさん、それならヴォルルさんが、あたし達の所に来ればいいじゃないですか。


えっ?  いま何て?  ちらっ


だから、一緒に旅をしましょうって事です。


そうね♪  その手があったわね。  なんで気が付かなかったのかしら。


あ・・ でも、みなさんが反対するんじゃないかしら?  特に姪のアリシアなんか絶対によ。


それなら大丈夫です。  今回の航海では実質、あたしがリーダーですから。


・・・


ヴォルルさんを前に、全員が甲板に一列に並んでいる。


と、言う事で、ここから先はヴォルルさんもあたし達の仲間として旅に同行することになりました。


よろしくお願いします。  ヴォルルさんがペコリとお辞儀をする。


ブゥーー ブゥーー


アリシア、独りブーイングしないの!


なお、同行の条件として、ヴォルルさんの強すぎる魔力は、戦闘時以外の使用を原則禁止しました。


やった!


アリシアがガッツポーズしている。


その隣にいた、おでこに絆創膏をしたメイアは、ぷぃっと横を向いた。 ヴォルルさんの事は、まだ少し怒っているみたいだ。


・・・


今回、ヴォルルさんがあたし達に同行するという事で、食料をたくさん差し入れてくれた。


特にお肉の差し入れは有難い。 この島では畜産は盛んでないらしく、お肉の値段が高くて困っていたのだ。


お肉の他にもいろいろな食材を頂いたので、冷凍保存した。


これには料理担当のコリン君もたいそう喜んでいた。  きっと今まで食べたことが無いようなお料理も食卓に上るだろう。


そして、第二の大陸に希望を燃やし、あたし達は出航したのだった。

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