第219話 ◆恐怖のサバイバルゲーム(その2)
◆恐怖のサバイバルゲーム(その2)
ヴォルルさんが設計した鬼のようなコースに、みんなの表情はだんだん暗くなっていった。
特に巨大魚のいる川を泳いで渡ろうとすれば、あたし達は確実に魚に喰い殺されるだろう。
それこそ、もろに噛みつかれたら体が真っ二つになって即死間違いなしだ。
でも何回かに分けてかみ砕かれ、苦しみながら死ぬのはもっと嫌だ。
それに現時点では、生き返れるだけの累積ポイントも無い。
結局、この川を泳いで渡れたのは、メイアとヴォルルさんだけだった。
メイアは巨大魚に食べられるどころか反対に追いまわして食べようとしていたのには心底驚いた。
やっぱりドラゴンは最強の生物だ。
しかしヴォルルさんは、川に入っただけで巨大魚達も逃げ出すという最強のオーラで、たぶんメイアなんかよりずっと強いんだろう。
川の対岸に残り全員が船で渡り切ったところで、ヴォルルさんが昼食を用意して待っていてくれた。
河原でBBQは最高だ。
美味しい! ヴォルルさん、このお肉って何の肉なの?
セレネちゃん、なんでも美味しくいただければいいのよ。
いつの間にかセレネちゃんになってるし、何の肉か教えてくれない。
でもうまい。 航海が長いとどうしても魚料理が中心になってしまう。
特に今回は長い船旅だったので肉に飢えていたところだった。
肉も野菜も超美味しい。
みんなお肉とか足りてる? 足りなければちゃちゃっと獲ってくるから言ってね。
そうだ、ヴォルルさんに追加でお肉を獲りに行ってもらえば、何の肉か分かるかも。
いやいや、やっぱり見ない方がいいかも知れない。 もしも大蛇の肉とかだったらイヤだし。
そんなこんなで、お腹がいっぱいになったところで、ヴォルルさんが残りの競技の説明をし始めた。
は~い、よく聞いてね。 次は巨大蟻地獄からの脱出ゲームです。
これって生死をかけているのにゲームなんだ。 ←心の声デス
一番底には、本物の蟻地獄が居るから食べられないうちに脱出してくださいね~。
イヤーーー あたし虫は苦手なの。 ここはパス! 絶対にパス。
アリシアがついに泣きを入れ始める。
あたしだって虫は大嫌いなんだよ。 日頃の強気はどこに行ったんだよ!
あたしは、ここぞとばかりにアリシアを虐めてやる。
だって魔法が使えなければ、セレネよりも弱いんだもん。
あれっ? 飛行魔法と移動魔法以外なら使っても良くなかった?
そうだったっけ・・・
アリシアがキョトン顔をしている。
ねぇ、ヴォルルさん?
戦闘魔法や防御系は、使っても良くてよ。
ほらね。
だ、だったら問題ないわ。 豪華賞品はあたしのものよ!
あーー はいはい。 頑張って優勝してね。 どうせあたしの今のポイントだと、どう頑張ってもブービー賞が精一杯だし。
・・・
すり鉢状の蟻地獄の巣の底に居たのは、全長5mはあろうかと思える蟻地獄だった。
特に頭についた牙の長さは、ゆうに1mはあるだろう。 あんなのに胴体を挟まれたら、体が真っ二つにされてしまう。
あたしとキャロンさん以外は魔法が使えるから、蟻地獄は楽勝で倒せる。
だから、あとは崩れる砂のすり鉢から、なんとか這い出せればOKだ。
キャロンさんは、魔法が使えなくても必殺ねこパンチで蟻地獄を倒した後、その身体能力の高さを活かして、すり鉢を駆け上れば脱出するのは一番早いかも知れない。
問題なのは自分だ。 まだ魔法はコリン君の指導を受けていないから、ほとんど使えない。
これで、どうやって蟻地獄と戦えばいいのだろう。
あれこれ考えているうちに、ヴォルルさんが競技開始のカウントダウンを始めてしまった。
10・・9・・8・・
いつもなら、メイアかシルフが助けてくれたので、こういう事態は想定していなかった。
7・・6・・5・・4・・
あ、あの。 あたしこの競技は・・・
3・2・1
え、ここだけカウントが早い・・
・0 それっ、ドォーーン
え、えーーーっ!
あたしは、この競技はパスするつもりだったのだけど、ヴォルルさんにあっと言う間に蟻地獄の巣へ突き落されてしまった。
ドサッ ゴロゴロゴロ ドサッ
ザザッ ズズッ ズズッ 底まで転がり落ちて、すぐに砂の中に体が沈み始める。
ザーーーッ さっそく蟻地獄の牙が砂底から勢いよく飛び出て来た。
ギャーーー 怖いよーーー!
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