第218話 ◆恐怖のサバイバルゲーム(その1)

◆恐怖のサバイバルゲーム(その1)


このゲームは、飛行魔法とか移動魔法は原則として使ったらダメよ。


ただし、命に危険が及ぶ場合は、10ポイントと引き換えに使用を許可します。


ヴォルルさんが、しれっとルールの説明を始めた。


やだ、なにそれ怖い!


死ぬの?  ねえ、セレネ、あたし死ぬの?


アリシアが異常に怖がっている。



何しろトラップをクリアして、ゴールにたどり着いた順に得点が与えられるから頑張ってちょうだいね♪


あっと忘れてた。  大怪我で死にそうな時は、20ポイントと引き換えに瞬時に回復させてあげるから心配しないで。


ただし、死人を生き返らせるのは、99ポイントだからね。


あ・・あたし97点だから生き返れない・・・


大丈夫、死ななければいいのよ、アリシア。  ヴォルルさんがアリシアの耳元でボソッと囁く。


やっぱり、おば様って悪魔だわ。 ママに似てるのは外観だけなんだから!


あら、ララノアといるより楽しいでしょ?  ねぇ、セレネさん。


あたしはなんと返事をしていいか分からない。



それじゃ、適当にスタートしてね。


制限時間内にゴールすれば最低30ポイント加算されるから、死なずにゴールしてね♪



アリシア先に行きなよ。


いやよ!  セレネが先に行きなさいよ。


あたしは絶対にイヤ。 だって、どんなトラップがあるか分からないじゃない。




それじゃ、ボクが行きます。  あたしとアリシアがグダグダしているとコリン君が名乗りをあげた。


あ゛ーーー  死んだわコリン君。  やっぱりイケメンは短命ね。


い、嫌な事言わないでくださいよ。  それを言うなら美人薄命じゃないですか?  


それならセレネは長生きするわね。  アハハ


アリシアーー!  早く行け!  行っていっぺん死んで来い!


アハハ  ヤーイ  セレネのブスーーー


こうして順番にスタートしたのはいいけど、ここは想像以上に危険なコースだった。



まずは、長ーい一本橋を渡るのだけど、下には溶岩の池がある。


ここは地獄かよ!


溶岩の熱気が下から半端なく伝わって来る。  あたしは超暑がりだ。  火の山の洞窟の記憶がよみがえる。


橋の幅は15cmくらいで両足を揃えて乗せることが出来ないため、体がふらつく。


わわっ


半分行かないで落ちた。  魔法が使えるようになって心から良かったと思った。


ってか、飛べたことの方に驚いた。


はい、セレネちゃんマイナス10ポイントね。


これってヴォルルさんの分身?  シルフの半分くらいの大きさのヴォルルさんが一人ひとりについて来る。


なんと、この橋で落ちたのはあたしだけだった。  アリシアの笑い声が聞こえるようで超悔しい。



次は、ターザンのように一本のロープにぶら下がって、針の谷を飛び越えるのだが、ロープの束から自分が使う一本を選ばなくてはならない。


ちょうど駄菓子の糸引き飴のように、あたりハズレがある。


はずれは長いロープで、針の山すれすれか刺さる場合がある。


ゴムみたいな素材もあって、これを引いたら確実にいっぺん死ぬ。


また短すぎても向こう側に付けないので、結局力尽きて谷底に落ちてしまうのだ。


ここでは、アリシアが落下した。  マイナス20ポイントで、ざまあみろだ。


でも、串刺しで血だらけのアリシアはグロかったな。


メイアも落ちたけど、体が硬いので針の方が折れてしまいマイナス10ポイントで通過した。


キャロンさんは、流石にねこ科だけの事はあって無事通過だ。



針地獄をクリアすると巨大魚のいる川を泳いで渡らなければならない。


河原でアリシアがシクシク泣いていた。  さっきお腹に刺さった針が相当痛かったらしい。


これも修行だと思って頑張りなよと心にもないことを言って励ましてしまった。


あたしは泳ぎは得意とは言えないけど、200mくらいなら泳ぎ切れる。


ただ問題なのは、巨大魚がどのくらい生息しているかだ。


魚に喰われて死ぬのは真っ平ごめんだ。 しかも生き返るのには、ポイントも足りない。



キャロンさんは、水に濡れるくらいならとマイナス10ポイントで向こう岸に渡してもらっていた。


アリシアより早くゴールしたくて、川の中にジャブジャブと入って行くと目の前を5mくらいの魚が跳ねた。


魚の開いた口を見て、あたしは気が遠くなった。  その口にはホオジロザメより鋭い歯がぎっしり並んでいたのだから。

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