第214話 ◆ヴォルルさん

◆ヴォルルさん


ララノアの双子のお姉さんの名前は、ヴォルルさんと言うのだそうだ。


ヴォルルさんは、町全体に魔法をかけて人々の姿が見えないようにしていた。


魔法が解かれてみれば、もちろん桟橋には数多くの船も停泊していて、港も大賑わいだった。


あたしが最初に入った塔は、やはりこの町の百貨店みたいなもので、ヴォルルさんが経営しているお店兼住居とのこと。


そしてこのお店は、ヴォルルさんが世界中に持っている数多いお店や別荘などの1つらしい。


美人でお金持ち、しかも絶大な魔力、なんとも凄い人だ。


ただ、あの性格なのでエルフの長とは反りが合わず、エルフの里を早くに飛び出し、世界中を旅して回っていたのだ。


・・・


そのころ沖に停泊していた船上のモッフルダフ達は、突然港にたくさんの船や人々が出現して驚いていた。


そして船にメイアだけが戻って来たため、あたしに何かあったかも知れないと思い、急いで船を港へと向けたのだった。



あたしは、ヴォルルさんにお礼を言ってお店を出ようとしたのだけれど、ヴォルルさんに呼び止められた。


どうしたのかと思っていると店員さんを連れてきて、お店にある服とか下着を好きなだけ持って行っても良いと言われた。


そこで店員さんにお店の中を案内してもらって、女の子全員に一着ずつ服と下着を選んだ。


もちろんコリン君にも、ひらひらフリルの飛び切りカワイイのを選んであげた。


これでみんな、もう萌え萌え間違いなしだ。


あたしは、服の入った手提げ袋をたくさん持って桟橋に向かった。


桟橋では、みんなが下船して船に向かって歩いて来るあたしを並んで待っていてくれた。


セレネーーー  


真っ先にメイアが走って来る。


セレネ、どこに行ってた?


ふふふ 内緒。



セレネ、あんた偽物ね!  みんな気を付けて!


アリシア、何を言ってるの。


この女からは魔力を感じる。  絶対にセレネのはずがないわ。


僕もそう思います。


コ、コリン君まで・・



セレネ、抱っこ~


メイアは、あたしを本物だと信じてくれるのね?


これ、セレネの匂い~


そうか、メイアは嗅覚で判断してるんだ。


メイアを抱っこすると、みんなも何となくあたしが本物なのかと半信半疑になったので、今まであったことを話すことにした。



セレネが魔力を・・・  しかもあたしより強力って・・  そんなのゆるせないわ!  ←アリシア


ママすごい。 ←ニーナ


たまげたなぁ・・  ←コリン君


にゃ?  ←キャロンさん



まあ、本物と分かってくれたところで、はい女の子達にお土産。


一人ずつカワイイ服と下着が入った袋を手渡して行く。



ぼ、僕は女じゃありませんよ!


またまた、コリン君は女物の服しか着れないくせに。


どうせヴォルルさんに貰ったものだから、遠慮しなくていいからさ。



セレネさん。 ヴォルルさんにお会いになったのですか?


うん、ヴォルルさんが魔力を分けてくれたんだ。


モッフルダフは、ヴォルルさんのこと知ってるの?


ええ、あの方は大富豪でわたしのお得意さんですよ。


そうなの?  そう言われてみれば確かにお金持ちだったなあ。



ヴォルルさんの名前が出ても、不思議なことにアリシアは何の反応もしない。


アリシアは、ヴォルルさん知らないの?


知らないわ。  どうしてあたしがヴォルルとか言う魔女なんか知ってるって思うの?


いや・・・ ごめん。


あれれ? ヴォルルってもしかして偽名なの?


あたしは、これ以上アリシアに聞いてはいけない気がした。


ヴォルルさんから貰った魔力を使うとどんなことが出来るんだろう?



それを試す機会は、意外と早く訪れるのだが、その時のあたしは知る由もなかった。

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