第206話 ◆真ん中の島

十一部


◆真ん中の島


まだまだ次の大陸まで着くには程遠いが、世界地図を見れば行く手には中継地点であるかのように、割と大きな島が存在している。


よって、この島にはこの広い海を航海する船のほぼ全てが、食料と水を補給するために立ち寄るのだ。


古くから栄えたこの島は良港に恵まれていたり、温暖な気候で農作物も豊富にとれるため、引退した船乗りたちが永住する地としても有名らしい。


キャロンさんが乗って行った救命ボートも海坊主に木端微塵にされてしまったので、この島で調達する予定だとモフルダフから聞いた。


そして、この島に着けば長い航海も、ようやく半分が過ぎたことになる。


・・・


前方右手に島影を発見!  ラッセがマストの上から大きな声でみんなに告げる。


あれが、船乗りの楽園と呼ばれる島です。  モッフルダフが、あたしに双眼鏡を渡しながら説明して来る。


それって、まさかとは思うけどランランランドみたいなんじゃないですよね。


ホッ ホッ ホッ


まあ、あそこほどではありませんが、船乗りがいる限りそういう場所はどこにでもありますよ。


そう言われてみれば、あっちの世界にもキャバクラとかあったしなぁ・・ そんなもんかとあたしは妙に納得してしまう。



さ・い・て・い!  いつの間にかアリシアが隣であたし達の会話を聞いていた。


セレネってば、なんでそんなに納得したような顔をしてるのよ!


ひぇ~  こっちにとばっちりが来たか~


困ってモッフルダフの方を見れば、もういないではないか。  まったく師匠は逃げ足が速い。



その勢いで風が起きたわけではないのだけど、アリシアの金色の長い髪が海風になびいてキラキラ光る。


ねぇ、アリシア。 島に着いたら美味しいものでも食べに行こっか。


べ、べつに・・ セレネが行きたいなら一緒に行っても良くてよ。


うん、それじゃあ約束ね。


あ・・う、うん。


うふふ  どんなお店があるか今から楽しみだね。


そ、そうね。


アリシアは照れくさかったのかそう言うと、そのままプイッと船室に降りて行ってしまった。


・・・


船は徐々に島に近づき、妙に突き出ている半島を回り込んで、港のある湾の中に入って行った。


何か様子がおかしくないですか?


コリン君が桟橋の方を見ながらポツリとつぶやくように言った。


その声に甲板に出ていたみんなが、目を凝らす。


ほんとだ。  誰もいない!


なんで?


なんかヤバくないですか。


ちょっと此処で船を止めよう。  モッフルダフがフィアスに停船するように指示を出す。


そして船は港の沖合100mのところで停止した。


いったいこの島で今なにが起きているのだろう。  あたしは不安になった。

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