第207話 ◆上陸したいな

◆上陸したいな


上陸したらせっかく美味しい物を食べに行こうと思っていたのに、何だか島の様子がおかしい。


食事はコリン君が料理にいろいろ工夫して、おいしいものを食べさせてくれるけれど、やっぱり飽きてしまう。


それに長い航海では、狭い船の中しか動けないのでストレスも溜まる。


あたしは早く上陸して揺れない土の上を歩きたかった。



ねぇ、モッフルダフ。 ここから港を眺めていても何も始まらないでしょ。


ここは、何人かで町の中を偵察して来たらどうかな?


あたしは、双眼鏡で港をじっと見ているモッフルダフに提案した。


いや、これ(双眼鏡)で見た限りでは、建物の中に何かがたくさん隠れています。


えっ、それって・・・もしかしたら魔物のたぐい?


あたしは一瞬、アンジェリクの国(魔王)のことが頭をよぎった。



いいえ、魔物とは違う感じがしますね。


だったらやっぱり偵察するしかないと思うけど。


ニーナなら瞬間移動できるし、メイアは空を飛べるし、アリシアとコリン君は魔法使えるし、キャロンさんは猫パンチ強力だし・・・


つまりセレネ以外なら誰でも適任ってことですね。  モッフルダフが顔の奥で光る眼を丸くしてこっちを見る。


あぅぅ  あたしは自分で言っておきながら、しまったと思った。



何しろ未知の恐怖より、陸の上を歩きたい衝動の方が強いのだ。


だ、大丈夫よ。 二人一組なら問題ないでしょ!



いやいや、もしも伝染病とかだったら、いくら特殊な能力を持っていても役には立ちませんよ。


あっ・・・


あたしは、想定もしてもいなかった事をモッフルダフから言われ、自分はまだまだ経験が足りないひよっこなんだと思った。


それじゃあ、いったいどうするの?


もうしばらく様子をみましょう。  そのうち向こうが何らか動きをみせると思います。


そう言うとモッフルダフは、ラッセとアルビンにそれぞれ両舷の見張りを、スヴェンに港を見張るように頼むと船室に消えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る