第194話 ◆アリシアの帰省(その8) 代々木公園

◆アリシアの帰省(その8) 代々木公園


なまじ高級ブティックで洋服を買ったのとプロにメイク&髪をカットしてもらったのが、二人を面倒事に引きずり込む。


そう、二人は都内でスカウトされる率が最も高いと言われるあの原宿に、のこのこと現れたのだ。


案の定すぐさま、いろいろなプロダクションのスカウト達に囲まれてしまう。


ちょっと、あんたたち邪魔よ!  そこをどきなさい!  ←言葉は通じていません。


先に進めなくなって、アリシアがプンスカ怒りだす。


あ・・あの~  そこを通してくださいませんか。


ニーナは消え入りそうな声でスカウトマン達に言うが、原宿の雑踏の中でか細い声などかき消されてしまう。



こうなったら、あたしの魔法で・・・


それはダメよ! 


だって、どうするのよ。 この人たち、通す気なんて全くないでしょ!


もちろんスカウトたちは、こんな逸材を見つけたら逃がすわけはない。


この状況に、ニーナもさすがに困り果てた。



仕方がありません。 アリシア、わたしに掴まって。


フッ


二人はニーナの瞬間移動で、少し離れた場所にジャンプした。


あっちに行くと、またあいつらが居るから、今度はこっちに行きましょ!


アリシアがニーナの手を引っ張るが、ニーナは動こうとしない。


いや、そうでは無く動けなかったのだ。


少しだけ回復した魔力をさっきのジャンプで使い果たしてしまい、体に力が入らない。



アリシアがニーナを休ませる所がないか辺りを見回せば、少し先に木がたくさん生えている場所が見える。


ニーナ、あそこまで歩ける?


なんとかなりそうです。


よろよろと二人が辿り着いたのは、代々木公園だった。


人は結構多いけど、親子連れだったり恋人同士だったりで、幸いなことに二人に関心を持つ人は居ないようだ。



ここで、しばらく休んでいきましょう。


ニーナはベンチに腰を掛けると直ぐにウトウトし始めた。 


陽ざしがポカポカと暖かい。


アリシアもいつの間のか一緒に寝入ってしまった。


・・・


フン フン


辺りから美味しそうな匂いが漂って来る。


フン フン


ガバッ


いけない、あたしまで寝ちゃってたわ。


それにしても、なにこのイイ匂い・・・



ふぁ~


アリシアの声にニーナも目を覚ました。


アリシア、どうしたの?


なんだか美味しそうな匂いがするの。


ニーナも目を瞑って、スンスンと周りの匂いを確認する。


まぁ ほんとう。


わかった、あそこのお店からだわ。  ちょっと行ってみましょう。



少し眠ったので、ニーナも動けるようになったようだ。


アリシアは、散歩する犬のようにニーナの手をグイグイ引っ張って行く。


二人は公園の売店で売っている焼きそばの匂いに引き寄せられていたのだ。



ねぇ、あたしコレ食べてみたいわ。 一つ買ってみましょうよ。


そうですね。  すみません、これを一つください。


あっ、あとあの白いウンチみたいなのも!


やだ、アリシアったら。 


でも、あそこの子どもが美味しそうに食べてるの。


わかったわ。 すみません、これも一つください。



アリシアはソフトクリームを一口食べて、そのおいしさに驚く。


ニーナ、これってプリンアラモードに乗ってたやつと同じ味がする♪


わ、わたしにも一口ください。



この後二人は、ベンチに座って仲良く焼きそばをウマウマ言いながら食べたのであった。

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