第192話 ◆アリシアの帰省(その6) プリンアラモード

◆アリシアの帰省(その6) プリンアラモード


あっ、いたいた。  おい、こっちにいたぞ! 


その声にニーナとアリシアが振り向くとそこには二人の男性が立っていた。



あの、ちょっとお時間をいただけないでしょうか。


わたしは、こういう者です。  そう言うと男性の一人が、小さな紙を差し出して来た。


紙には何か書いてあるが、流石にニーナも読み書きまでは出来ない。


あのぉ・・  何のご用でしょうか?


実は、このツイッターを見て、あなた方を探していたんです。


男性がスマホの画面をニーナに見せながらそう言う。


あっ  あたし達が写ってる!  もしかして、セレネもこっちに来てるの?


アリシアがスマホを覗いて声をあげたが、むこうの言葉なので男性たちには意味は伝わらない。


ニーナたちを撮って勝手にツイートしていたのは、さっきの高校生の中の一人だった。


どうやら、その動画が早くもネットで話題になっていたらしい。


撮影された場所は、動画に写っていた電柱の住所表示で見当がついたので、ここまで探しに来たらしい。


実は、お二人にモデルをお願いしたいのですが。


モデルですか?


ニーナには、男性が言うモデルと言う言葉が分からない。


当社のファッション誌の表紙モデルなんですが。


ファッション誌?


よろしければ詳しく説明させていただきますけど、お時間はありますか?


はぁ・・ 特に急ぎの用事はありません。


ならば、ひとまず外のお店で。


そういうと男性たちは、ニーナとアリシアを1階のカフェへ案内した。


席に座るとウエイトレスがメニューを持って来る。


何かお飲み物は?


メニューを見せられても、ニーナたちにはどんなものか分からない。


ニーナは適当にゆびを指す。


あ、あたしコレ!


アリシアは、メニューのプリンアラモードに目を付けたようだ。



それで表紙の話しなんですが、できれば今月号に載せたいと思ってるんです。


今月号?


どうでしょう。  もしよろしければ、これから撮影させていただけないでしょうか。


モデル料は、弾みますので是非お願いします。


はぁ・・・


ねぇ、アリシア、どうしよう?



いいんじゃないの。  これすっごく美味しいわ。  セレネってば、ほんとうにズルい!


アリシアはプリンアラモードに夢中で、答えは適当極まりない。


わかりました。 やらさせていただきます。


ほんとうですか!  よかった。  今月号は大ヒット間違いなしですよ!



この簡単に引き受けたモデルのお仕事の所為で、ララノアからめちゃくちゃ怒られることになるのだが、この時はそんな事になるとは露知らずの二人だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る