第191話 ◆アリシアの帰省(その5) ハワイですか?

◆アリシアの帰省(その5)


ここは、セレネが通っていた高校の応接室である。


長椅子にニーナとアリシアが座って待っていると事務員がお茶を入れて持って来てくれた。


ズズッ


あっちっ!


これなに?  熱いし苦いし・・  お腹のお薬かなにか?


アリシアが行儀悪く、ペッ ペッとお茶を吐き出したのを見て、事務員がジュースを持って来てくれる。


なによ! 最初からこっちを出してくれればいいのに!


幸いな事に、アリシアの言葉は事務員には分からない。


わざわざ、すみません。  ニーナが代わりにお礼を言う。 



しばらく待っていると、さっきの教師が応接室に入って来た。


お待たせしました。


道に迷われたとおっしゃっていましたが、どちらに行くご予定だったのでしょうか。



いきなりストレートに聞かれたので、ニーナも心の準備が出来ていなかった。


そこでセレネが偶に話してくれたことがあった、こちらの世界の事を思い出してみる。



えっと、ハワイとか?


えっ? ハワイですか。  ここは日本ですけど・・・


あっ、いえ、その・・・


ニーナは、セレネが海賊の宝島がハワイで泳いだ海に似ていると言っていたのを思い出す。


プ、プールでそういうところが・・・


あーー  アクアブルー○摩かなあ?  それとも東京サ○ーランドですかね?


た、たしかそんな所だったような・・・


日本には観光で来られたのですよね?


えーーっと はい。


やはり、宿泊されているホテルに近い方がよろしいですよね。  どちらにお泊りですか?


ニーナは、だんだん額に汗して来る。


隣では、それを見てアリシアがニヤニヤしてる。


あの・・泊まるところは、これから決めるので・・・


そうですか。 それでは、ここから近い方が、っといってもあまり変わらないか。


それでは地図を印刷してきますので、もう少し待っててください。


そう言って、教師は部屋を出て行った。



ふぅ~  もう、アリシアったら人が困ってるのを見て笑うなんて酷い子ね。


だって、こんなニーナは滅多にみられないもの。


でも、ほんとうに困ったわね。  魔力の回復には1日は必要だし、お金は無いし。



1日くらい食べなくてもあたし平気よ。  泊まるところだって寝なければOKじゃない?


それはダメよ。  それでは魔力が回復できないわ。


あ゛ーーー  そうだった。   ニーナ、どうしよう。



二人が動揺し始めた時、教師が地図を持って部屋に入って来た。


お待たせしました。  これが地図です。


此処からの行き方も詳しく書いておきましたので大丈夫だと思いますけど、何かありましたら僕の携帯番号も地図の下に載せてあるので遠慮しないで聞いてください。


はい、ありがとうございました。


それではお気をつけて。



あ~あ  これからどうするのよニーナ!


そうね・・  少し歩きながら考えましょうか。


二人は地図の矢印を見ながら、通りを駅の方に向かって歩き始めた。


すれ違って行く人は一様に二人を見てくる。


ねぇ、あたし達ってすっごく見られてな~い?


み、見られてますね。


駅に近づくに連れ、当然他人も多くなって来る。



ニーナ見て! 階段が動いてる!  面白そう。  そう言うや否やアリシアはエスカレーター目掛け一目散に駆けて行く。


あっ、アリシア待って。


アリシアは下りのエスカレータに乗って、先に地下へ下りていってしまった。


ニーナは必死で後を追う。  こんなところで逸はぐれたら、それこそ大変だ。


ニーナもエスカレーターに乗って地下へ下りるとそこには見たことがないくらいの食材が並んでいた。


す、すごい・・・


ニーナ、こっちこっち!  アリシアが大声で自分を呼んでいる。


アリシアが呼んでいるところまで行くと人のよさそうなおばさんが、木の尖った小さな棒に焼いた肉らしい物を刺してくれた。


頂いてもいいのですか?


ええ、美味しいから食べてみてね。 ここの粗びきウインナーは最高よ~。



お、おいしい!


ニーナとアリシアがウマウマと食べていると周りに人がどんどん集まって来る。


おやおや、綺麗なお嬢さんたちがいてくれると売上が上がっていいわ~。


食品売場を一周してくると試食だけで、お腹がいっぱいになる。


セレネってば、こんなに美味しいものを食べてたのね!  帰ったら少しいじめてやるわ!



あっ、いたいた。  おい、こっちにいたぞ! 


その声にニーナとアリシアが振り向くとそこには・・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る