第190話 ◆アリシアの帰省(その4) セレネの大好物

◆アリシアの帰省(その4)


こ、ここはいったい・・・  どこなの?


なんとニーナとアリシアは、セレネが暮らしていた世界へジャンプしてしまっていたのだ。


道路はクルマがひっきりなしに走っている。



キャーー  たいへん、子どもがあんなに沢山食べられちゃってるーーー!


ニーナどうしよう。


アリシアが見て驚いていたのは、幼稚園の送迎バスだ。



アリシア落ち着いて。 あれは馬車みたいなものだと思うわ。


ここはどうやらあたしのママが住んでいた世界みたい。


セ、セレネが居た世界・・・



それじゃあ・・


そう、あたしがママの記憶をコピーした時に、ここの記憶が強く残っていたんだと思う。


そんな~


心配しなくても大丈夫よ。 すぐに向こうの世界へジャンプし直すから。



ギャーー  すっごくでかいのが来るーーー!


ダンプカーやトレーラーが近くを通るたびに、あの気の強かったアリシアがビクつく。


あらあら、ヒドラの方がもっと怖いでしょ。



それじゃ、ジャンプするから掴まって。


はやく、はやくーーー


行きますよ!



スカッ


まさに、そんな音が聞こえたような気がした。


あらっ?  たいへん魔力が残ってなかったわ。


ええっ!  どうすんのよニーナ!  こんな時にセレネみたいにボケないでくれる!



二人が歩道であたふたしていると、ちょうど登校時間帯の高校生たちが増えて来る。


変わった服装の金髪美女と美少女が歩道にいるだけで、違和感が半端ない。


そのうちに女子高生たちに囲まれ始める。



きゃー  この娘、超かわいい!


何かの撮影中ですか?


雑誌のモデルさんなんじゃないの?


目がすっごいブルーで綺麗~ 羨ましいーー。



ねぇ、この人たちの服って・・・  アリシアがニーナの袖を引っ張りながら指摘する。


そうね、ママが着ているのと同じだわ。


そう、ここはセレネが通っていた高校のすぐ近くだったのだ。


なんでこの場所がセレネの意識の中に強く残っていたのか。


それはニーナ達がジャンプした目の前にあるお好み焼き屋の豚玉が、セレネの大好物だったからに他ならない。



こらこら、お前達。 こんなところで立ち止まってないで、早く学校の中に入りなさい!


先生らしき人が、歩道に溢れていた生徒たちを学校へと追い立てる。



生徒たちがどうもご迷惑をおかけしたようで、すみませんでした。


あ、いいえ。


ちょっとニーナ。  この人なんて言ってるの?


ニーナはセレネの娘なので言葉が分かるが、アリシアは向こうの世界の言語でないと分からないのだ。


いつもは、セレネが言葉を使い分けているので問題なかったし、ニーナも母親との会話にしか日本語を使わない。



ついでで申し訳ないのですが、わたし達道に迷ってしまって困っているんです。


助けていただけませんでしょうか。


そうでしたか。 ここではなんですから学校の方でお話しを伺いましょう。


ではあちらですので、わたしについて来てください。


こうしてニーナとアリシアは、期せずしてセレネが通っていた高校に行くことになったのだった。

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