第183話 ◆ランランランド(その1)
◆ランランランド(その1)
第二の大陸との距離は、かなりあると聞いていたが出航してから僅か1週間目で島影が見えて来た。
島影だとモッフルダフが言うから、あたしも島影だと言っているだけで、そう聞かさなければ大陸に着いたかと思うほどの大きさだ。
いつもは甲板などには出てこないで、ビールばかり飲んでいるアルビン、スヴェン、ラッセのおっさん三人組が今日は甲板に出てきて、はしゃいでいる。
う~む、 これはきっと何かあるなとあたしは思った。
そこで少し探りを入れてみることにする。
スヴェンさん、今日は良い天気ですね~。
おぅ、セレネちゃん。 確かに天気がええなぁ。
でも、みなさん揃って甲板に居るのって珍しいですよね。
おっ・・ そ、そうか? 別にそんなことないとおもうがなぁ・・・
ひょっとして、あの島に美味しい食べ物屋さんとかあるんですか?
いや、わしは特に知らんよ。 普通じゃろ、普通。 そ、それじゃまたなっ。
そう言うとスヴェンは、足早に船尾の方に歩いて行ってしまった。
やはり挙動が怪しいぞ。
もう少し、おっさん達の観察を続けてみよう!
・・・
メイアは唯一、おっさん達に警戒されていないキャラなので、それとなく偵察に行かせる。
それでも露骨に近づくと不信感を与えるので、ボールを持たせてボール突きをしながら、逸れたボールを取りに行く体で接近させる。
ドラゴンの聴力なら会話くらい、船のどこに居てもキャッチできるのだが、どうもゼスチャーも交えてやっているようなのだ。
競りでよく見るような怪しいやり取りだ。 脱いだ帽子の下で何やらそれに近いことをしている。
良く考えて見ればメイアはこういうのは、まだ疎うといので、結局何の手がかりも得られず、時間の無駄に終わってしまった。
まあ、ほおっておけば、そのうちボロを出すに違いない。
・・・
気が付けば、船はもう直ぐ港に入ろうとしている。
船首には3人こおっさんにモッフルダフまで加わって、港の奥に広がる街並みをウキウキ顔で見ているではないか。
これは入港したら目が離せないぞ。
自分たちだけで楽しい思いをしようなんて、ずるいことは許さないんだからね。
・・・
港はとても賑わっていて、船を停泊させるのに豪く時間がかかってしまった。
おっさん達は、無駄に待ち時間が長くなり、その間ますます落ち着きがない状態だった。
アルビンは甲板を行ったり来たりウロウロしてるし、スヴェンは船首から街の方をキョロキョロ眺めまわしていた。
ラッセは、ブツブツ独り言を言いながら、意味も無くマストに登ったり下りたりを繰り返していた。
そして桟橋に接岸するや否や、港湾管理局に上陸申請をするため、我先に駆けて行ってしまった。
普段、それくらいのスピード感で仕事しろよ! 思わずそう言いたくなるような速さだった。
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