第182話 ◆そして次なる大陸へ
◆そして次なる大陸へ
魔王は50年も前に亡くなっていた。
あの魔王の幻は、死ぬ前に自身が愛する妻のために残した魔力を込めた「魔王の間」であった。
そして、魔物たちは守らなければいけない王妃が「魔王の間」から出て行ったため、魔王の城からそれぞれの住処へと去っていった。
これからは、この国はアンジェリク王妃が正式に即位し、女王として亡き国王に代わって国を立て直し、豊かにして行くに違いない。
あたし達は、この国で販売する予定だった薬をアンジェリク王妃に贈呈し、国民のために使ってもらうことにした。
・・・
もう直ぐ、次の大陸に向けて出港する予定だが、今いる大陸との間は、結構離れているらしい。
でも、その間には幾つかの島があるそうで、そこにある港に寄港しながら、航海に必要な物資を補充するようだ。
モッフルダフやおっさん3人組みは、それらの島に行くのをすっごく楽しみにしているので、何か如何わしい臭いがする。
まあ、船乗りが港に立ち寄るのだから、だいたい想像はつくけどね。
わくわく感を漂わせているおっさん達と対照的なのは、コリン君とメイアの二人だ。
コリン君は、はりきって練習した爆裂魔法をみんなに向かって放ち、あわやパーティーが全滅するかもしれない状況だったことをアリシアに散々弄られて落ち込んでいる。
一方メイアはといえば、翼竜とのバトルの疲れがよほど残っているのか、珍しく抱っこもせがまず寝てばかりいる。
あたしは、そんなメイアが心配で、今日も様子を見に行くとベッドでスヤスヤ眠っている。
断言しよう、幼女の寝顔より可愛いものはこの世には無い。 サラサラな髪、ぷっくりした頬っぺた、小さな手・・・
あたしは、しばらくメイアの頭を撫でてあげていたが、首筋に小さな傷があるのを見つけた。
きっと、魔物から受けた槍の傷なのだろう。 いくらドラゴンの皮膚が硬いといっても、同じところを何度も槍で突かれれば傷は出来る。
槍には猛毒が塗られていたとメイアから聞いたので、傷のことがひどく心配になる。
そこであたしは急いで、治癒魔法が出来るニーナとアリシアを呼んだ。
この傷なんだけど・・・ どう思う?
あたしたちに任せなさい! 直ぐに治してあげるわよ。
ちょっ、あたしの時とずいぶん対応が違うじゃないの!
セレネは大人なんだから、少し我慢するくらいがいいのよ!
ママが完璧な治療をすると、むちゃをする人が多くなっていけないし、治癒魔法を使う側も魔力の消耗が激しくなるって言ってたわ。
それに魔法に頼ってばかりだと自分の自然治癒力も低下するのよ。 セレネ、わかるかしら?
・・・ なるほど。 どうもすみませんでした。 よくわかりました。
あたしは素直に反省した。 アリシア・・いや、ララノアの言うとおりだ。
毒はメイアさんが自分で解毒してますね。 たぶん眠ることで解毒速度を早めているのだと思います。
なるほど~ さすが、ニーナの分析は凄いねぇ。
何よ! セレネ、あたしのことも褒ほめなさい!
あー はいはい。 こっちにおいで~ あたまポンポンしてあげる。
アリシアはスタスタ寄って来て、あたしの方へ頭を少し突き出す。
ふふっ 可愛い。 ←心の声
ポン ポン
つ、ついでにハグもしなさいよ!
いいよ、こっちにおいで~
ガバッ
おぉぅ!
アリシアが思いっきり飛びついて来たので、体制が崩れ倒れそうになるが、なんとか踏ん張った。
ぎゅぅうーーー
ひゃーー
アリシアがあたしの胸に思いっきり顔を埋うずめてる。
こ、これはひょっとすると伝説のパフパフってやつじゃないのか?
まだ、母親が恋しいのだろうな・・・
そんなアリシアを見ていると、上目遣いにあたしを見て来たアリシアの目と目が合ってしまった。
セレネ・・もう少しオッパイ大きければ良かったのに! アリシアがボソッと言う。
ぐっ・・・ あ、あたしだって限りなくDに近いCカップなんだからね!(嘘)
ハイ、そういう事を言う人には、これでサービスタイム終了でーーす。
・・・
出航の日、アンジェリク王妃が港まで見送りに来てくれた。
あたしは、まりあ先輩から子爵の爵位しゃくいを授かっていたのを思い出し、同盟を結んで交易が出来るよう書状を書いて王妃に渡してあげた。
アンジェリクは、最初あたしがこの大陸一の強国の子爵だったことに驚いたが、直ぐに感謝の言葉を述べて喜びを表した。
さぁ、いよいよ長い航海への旅立ちだ!
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