第178話 ◆魔王討伐作戦(その11)

◆魔王討伐作戦(その11)



あたしは、階段の踊り場で魔物たちに とうとう追いつかれてしまった。


シルフも今は力尽きて、あたしの胸の谷間で伸びていて、こうなるともう役には立たない。



そして遂に、あたしは魔物に右足首を掴まれてしまった。


もう駄目、今度こそ殺られる!!


あたしは覚悟を決めて目をギュッと瞑った。


だが意外なことに、足を掴んでいた魔物の手の力が急に抜けた。



恐る恐る目を開けると、あたしの前にはニーナが立っていた。


ママ、待たせてごめんね。


ニーナ、あなた・・・


ママ、話すと長くなるので、こっちが片付いたらゆっくり話します。



ニーナはそう短く言うと、たちまち防御魔法を展開する。


これで少し時間が稼げます。  さあ、魔王のところへ急ぎましょう。



そしてすぐさま腰抜け状態のあたしの手を引いて2階へと駆け上がった。


辿り着けば2階のフロアは、コリン君が倒したであろう魔物の死骸が山のようになっている。


各フロアを確認しながら階段をどんどん上がって行くと、7階のフロアは明らかに他の階とは装飾が異なっている。



ここですね。  ニーナは確信したように言う。



廊下に敷き詰められた豪華な絨毯の上にも、魔物の死骸が点々と続いている。


おそらく、コリン君が魔物を倒しながら奥へ進んで行ったに違いない。



ドォーーーン


突然、凄まじい爆発音とともに廊下の奥から紅蓮の炎が猛烈な勢いで、あたしとニーナに向かって来た。



ママ、こっちへ!


ニーナがあたしを自分の後ろ庇うと、ここでも強力な防御魔法を展開する。


間一髪で炎の塊はバリアで遮られるが、あたしとニーナは凄まじい爆風の力で階段の方へとズルズルと押し戻されてしまう。


あわや階段から転落かと覚悟したが、ギリギリのところで止まった。


ふぅ~  危なかったね。


ほっとして、あたしがニーナに話しかけると突然背後からアリシアの声がした。



何を言ってるの?  あたしが止めてあげたんじゃないの!  ちゃんと感謝しなさい!


で、いつからいるのよニーナ?  すっごく心配してたんだからね!


ごめんなさい。 わたしも、いろいろ大変だったんです。



一呼吸遅れて、追っての魔物を片付けたキャロンさんとモッフルダフも7階へ下りて来た。


にゃっ?


ニーナが一緒にいるのを見て、キャロンさんの目がひときわ真ん丸くなる。


おお、ニーナさん。 無事でよかった。


モッフルダフもニーナを見て安堵したようだ。



ところで、今の爆発はコリン君の爆裂魔法じゃないの?


そうだ、そういえば魔王戦に備えて練習してたやつだ!


アリシアに言われるまで気が付かなかったが、昨日も練習してたっけ。


考えてみればニーナは行方不明だったので、コリン君が爆裂魔法の練習しているところは見ていなかった。



まあ、たいへん。  それじゃあ、急いで合流しなくちゃ。


みんなで爆発が起きた魔王のいるであろうと思われる部屋を目指して走った。



もう少しで部屋の前というところまで来れば、なんとコリン君が部屋からゆっくりと出てきたではないか。


よかった。 コリン君、今の爆裂魔法で魔王を倒したのね。


喜んだアリシアがコリン君へ駆けよろうとするが、それをニーナが止める。


アリシア、待って!  なんだか様子がおかしいわ!



コリン君は、あたし達の方へゆっくり向きを変えると、赤い目でニタリと笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る