第179話 ◆魔王討伐作戦(その12)

◆魔王討伐作戦(その12)



大爆発の後、コリン君が部屋から出て来たが、なんだか様子がおかしい!


あたし達を見る目に生気が全く感じられない。



気を付けてください。 コリン君は、魔王に操られています!


ニーナが両手を広げ、みんなを下がらせながら注意を促す。


その言葉に全員が驚く。


なんですって! ←セレネ


にゃっ? ←キャロンさん


ったっく! 使えないわねぇ!  ←アリシア


な、なんと!  ←モッフルダフ



コリン君は、あたし達メンバーの中でも1、2を争うくらい強いのだ。


そのコリン君が魔王に操られているなんて、もう最悪だ。



その本人コリンは、ニタニタ笑いながら、右手を天にかざし呪文を詠唱し始める。


みんな、逃げて!  また爆裂魔法を放つつもりよっ!


練習に付き合っていた、爆裂魔法の師匠アリシアが叫ぶ!



うわーーー


きゃーー


にゃにゃにゃーーーっ!


みんな、我先に元来た方へ全力で駆け出す。



既にコリン君が伸ばした右手には、大きな火球が出現している。



まずい!  間に合わない!


ドォーーーーン


ぎゃーー  ちょっと!  師匠のあたしより強力じゃないのぉーーー!



アリシアさん、わたしと一緒に防御壁を展開してください!!


ニーナが叫ぶと同時に防御壁を展開、アリシアが即座にそれに被せる。


バババァーーーン


大火球と防御壁がぶつかり合って、もの凄い音が鳴り響く!



ひぃーーー


あたしは、その場にしゃがみ込み頭を抱えた。


向こうの世界で、核弾頭ミサイルが飛んできた時は、こうしろと教えてもらった姿勢だ。



防御壁はアリシアとニーナの二人分の魔力が込められていたため、何とか爆裂魔法に持ち堪える。


廊下に立ち込めた煙が引いて行くと、あたし達の直ぐそばから、ゆらりとコリン君が姿を現した。



あわわわっ


この至近距離からあの威力の爆裂魔法を喰らったら全滅間違いなしだ!


かと言って7階から階段を駆け下りても、2発目に襲われるのは必至だ。



コリン君は、じりっじりっと近づいて来る。


そして右手を高々と頭の上に掲げた。



ヤバイ!


にゃっ!


そこにいるみんなが固まったように身動きできないでいる。



へへっ


コリン君が、嫌な笑いを見せる。


ニーナ!  防壁を張ってーー!  あたしは咄嗟に叫んだ。



セレネ 心配しないで。 たぶん大丈夫よ。


アリシアがコリン君の方を見ながら落ち着いた声で言う。



でも・・


コリン君の手のひらには、既に火球が出現し始めているではないか。


いやーーーーっ  もうダメーーーー!  



だぁーーーっ!


大声とともにコリン君が、二発目の爆裂魔法をあたし達に向かって放った。



ぷすっ


MT車がエンストしたような音がして、コリン君の手のひらから一筋の黒い煙が狼煙のろしのように立ち上る。



ほらねっ。  コリンは魔力切れよ!


魔力切れ?


そう、魔力が底を付いたのよ。  あれだけの爆裂魔法を短時間に2発も放ったら、魔力はもう残っていないわ。


キャロンさん、お願い!  アリシアが後ろにいたキャロンさんに声をかける。


にゃっ。


キャロンさんは、目にも止まらぬ速さでコリン君の鳩尾に猫パンチを繰り出す。


ズンッ という鈍い音とともにコリン君が床に沈む。


コリン君!  あたしはキャロンさんがコリン君を傷つけたのかと思い驚いて声をあげた。



心配しないで。 暴れないように気絶させただけよ。


さぁ、ぐずぐずしていると下から魔物が上がって来てしまうわ。


みんな、魔王を倒すわよ!


そう言うとアリシアは、コリン君が出て来た部屋へ真っ先に飛び込んで行った。

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