第177話 ◆魔王討伐作戦(その10)

◆魔王討伐作戦(その10)



塔の入口の攻防は時間が経つに連れて、あたし達側が断然不利な状況に陥っていた。


シルフは入口に向かって炎を吐き続けていて、そろそろ体力も限界に近い。


魔物たちは、入口で倒れた仲間を放り投げては突入を繰り返して来る。


マシンガンのマガジンも残りは2つしかない。


果たしてコリン君やアリシアは、魔王の部屋まで辿り着いたのだろうか?



あたしはシルフとアイコンタクトして、2階まで退くことにした。


セレネ、先に行け!


そう言うと、シルフが最後の力を振り絞り、入口に向かって大火炎を吐いた。


その一瞬の隙に、あたしは2階まで駆け上った。



直ぐにシルフが後を追ってこっちに飛んで来ようとしたが、力尽きて1階の階段の踊り場にへなへなと落ちてしまった。


あたしがシルフのところまで駆け下りるのと ほぼ同時に魔物たちも階段を駆け上がって来る。


あたしは狂ったように、魔物に向けサブマシンガンを打ち続けた。



カチッ カチッ


まずい!  弾切れだ!


あたしは、シルフを胸に挟むと一目散に階段を駆け上った。


もう、マガジンを交換している時間は無い。


こうなったら、急いでコリン君に合流するしかない。


しかし、魔物も巨体の割りに足が速かった。  あっと言う間にあたしの背後まで迫って来る。


そして遂に、あたしの右足を魔物の手が掴んだ。


もう駄目、今度こそ殺られる!!



・・・


アリシアは、ただ我武者羅がむしゃらに魔物たちの中を魔王に向かって突き進んでいた。


今回の魔王討伐の戦いは、自分が蒔いた種だ。  何としても自分の手で魔王を倒さなければならない。


この城の魔物の数からして、魔王を倒せるか自分たちが倒されるかは、時間との勝負なのだ。


何しろ数の差で既に負けている。 


いくら自分たちが強くても、いつかは体力が尽きてしまうし、一度に5体が襲ってきたら完全にアウトだ。



そんなアリシアの気持ちをキャロンさんもモッフルダフも痛いほど分かっていた。


ただ、アリシアのパワーは、少しでも魔王戦のために温存しておきたい。



キャロンさんは獣パワーを発揮し、ダッシュでアリシアを追い越し、魔物たちの中に突っ込んでいった。


ニャァゴーー フギャーー


必殺猫パンチの破壊力は凄まじい。


しかもパンチは、瞬きする間に何発も同じ個所に炸裂する。


身のこなしも素早く、魔物たちの間を縫っては猫パンチを繰り出して、次々に倒して行った。



そして、下の階に降りるとそのフロアだけは他の階と明らかに作りが異なった。


ニャッ(ここだ)!  この階に魔王の部屋があるに違いない。

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