第176話 ◆魔王討伐作戦(その9)

◆魔王討伐作戦(その9)


魔王城の城門前では、既に老人たちが甲冑姿で待機していた。


中には魔物戦用に造ったガトリング砲(弾の代わりに矢が飛ぶ)を持って来ている者もいる。


月が垂れこめた雲に隠れ、いい塩梅あんばいに辺りは暗闇に包まれている。


あとは、あたし達が魔王の居る塔に突入したタイミングで、城門前で一騒ぎ起こしてもらえば良い。


時刻は真夜中を過ぎ1時間が経過している。



それじゃあ、行くわよ!  アリシアがみんなを見回す。  敢えて言う、いまアリシアは、7歳8ヶ月だ。


全員が静かに頷く。



まずはメイアに乗ったアリシアとモッフルダフとキャロンさんが塔の最上階の窓を破って侵入する。


引き返して来たメイアに乗り、あたしとシルフとコリン君が塔の下から警備についている魔物を倒しながら侵入する。


メイアはいったん城門側に飛び、老人たちに合図を送った後、上空から魔王の塔以外を片っ端から焼き払う算段だ。


ただし、この国の平穏のためには、魔王だけは確実に倒したという証しが必要だ。



そして闘いの幕は、塔の最上階への侵入により切って落とされた。


キャロンさんが必殺猫パンチで窓を破壊し、先陣を切って飛び込む。


間髪入れずにアリシア、モッフルダフが続くが、すぐさま警備中の魔物達とのバトルが始まった。


思ったとおり塔自体の直径が40mくらいなので、大型の魔物はいない。


ここはアリシアが先頭になって、魔物を次々に倒して行く。


キャロンさんはしばらく出番がなさそうなので、シャーー シャーー と威嚇専門に徹している。



あたし達は、メイアに乗って塔の真下の入口近くに降り立ったが、こちらは最悪な状況だった。


すぐさま、100体は優に超える魔物たちに囲まれる。


それでもメイアが上空から火炎を放ち援護してくれたので、コリン君は辛うじて塔への侵入に成功した。


オラオラオラッ  かかってこいやーーー!


可愛らしい女の子の姿で、オラついているのがなんだか萌える。



あたしとシルフは塔の入口に留まり、群がって来る魔物たちを迎え撃った。


タタタタタッ  タタタ


あたしは、サブマシンガンをぶっ放しながら、魔物が迫って来ると手榴弾を投げつけた。


ドォーーン


何体かの魔物が、爆発で吹き飛ぶ。


シルフも威力を増した火炎で、魔物たちを火達磨にしていく。




一方、城門前で待機していた老人たちは、メイアが上空で炎を吐いたのに合わせ、一斉に雄たけびをあげた。


その声は周りの山々に反響し、予想以上の大きさとなって魔王軍を混乱させた。


更に老人たちは退却をせずに、城門を大木を使って突き破ろうとしている。


しかし魔物たちも相手が年寄りばかりなのをみて、侮って城門を開き打って出た。



この行動はどうやら想定内だったようで、老兵たちは一目散に退却を始める。


それにつられて魔物たちが、老兵を追いかける。


この魔物たちの行為は、飛んで火に入る夏の虫状態だった。


学習しない魔物たちは、たちまち伏兵に囲まれ、ガトリング砲の弓の餌食になっていった。



この戦いの中で一番苦戦したのは、メイアかもしれない。


最初のうちは上空を旋回しながら、口から大火炎を放ち魔物たちを焼き殺して行ったが、敵にも空を飛べるものがいたのだ。


以前メイアが痛い目にあった翼竜に魔物が乗って反撃を開始したのだ。


しかも、その数は優に20を超えている。


魔物達はメイアに接近しては、毒槍を投げて来る。


ドラゴンの固い皮膚には、槍は刺さらないが目や口は例外だ。


魔物たちもそこを執拗に狙って来る。


そのため、メイアは翼竜の数の多さに地上の魔物まで手が回らなくなっている。



メイアの地上援護が無くなったため、塔の入口には魔王を守ろうと魔物が殺到し始めた。


あたしとシルフは、倒しても倒しても数を増す魔物たちに限界を感じ始めていた。


やがて、じりじりと塔の内部へと押されて行く。


もう塔の外は、魔物が100体以上いるだろう。


このままでは、確実にまずいことになる。

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