第169話 ◆魔王討伐作戦(その2)

◆魔王討伐作戦(その2)


交渉に赴いたどこの町も、魔物たちの所為で寂さびれて活気がなかった。


姿が確認できる町の人々も、老人や女性と子供が多い。


そして、あたし達の戦闘支援要請に対しては、どこの町でも最初はあまり良い返事を貰えなかった。


それだけ魔物たちに対する恐怖心が大きいのだろう。


そこで、あたし達は先に上空から下見をした資料を基に具体的な支援内容を提示した。



最初の町は、山に囲まれていて材木が豊富にあるので、木を伐り出して先を尖らせ、巨大な弓矢を作って後方から一斉に放ってもらう事にした。


木の伐採や発射装置は、みんなで協力して2日で準備することができた。



次の町は、かつて石材加工で栄えていたため、巨石が多く残されていた。 この町では投石器を12機作って備えた。


他の町でも、ガトリング砲の弓矢バージョンや石油が採れる町では豊富な燃料を利用した長距離型火炎放射器などを作って、来るべき戦闘に備えた。


また、それぞれの武器は魔物達に見つからないよう、草木でカモフラージュしたり、迷彩色にペイントして完璧に隠した。



戦闘支援は、どの町でも老人たちが手伝ってくれる。  


彼らは、どうせ老い先短い身なので、これで魔物が倒せるなら、女子供のために死んでも構わないと言って笑った。



作戦としては、あたし達が魔物達の中でひと暴れし、少々小芝居をして劣勢と思わせ、罠の飛び道具が届く位置まで退却する。


魔物達が調子に乗って深追いをして来たところを、爺様たちに用意した武器を使って集中砲火を浴びせるのだ。


どのくらい倒せるかは、やってみないと分からないけど、当たらなくても心理的に動揺させられればこちらが優勢になる。


これは、あたしがテレビの時代劇でやっていた戦術をパクったものだ。


・・・


そして、全ての準備が整った翌日、ついに魔王との闘いの火蓋は切って落とされた。



最初の戦闘は、全長7m、直径50cmの巨大な弓矢を5機×3列に並べて、順番に射出する長篠の三段撃ち戦法だ。


あらかじめ試し打ちをして、矢が飛ぶ範囲を確かめ目印をつけてある。


退却しながら魔物を引きつけ、そのエリアに入ったらニーナが瞬間移動で発射指示に飛ぶ。


更に魔物たちが撤退出来ないように、森の木の上に隠れているアリシアが氷結魔法で氷の壁を作る算段だ。


これは、S属性のアリシアが考えた。  本当にこいつは恐ろしい女になる気がしてならない。


果たして、作戦は予想以上の成果を収め、この地の魔物を全滅させることが出来た。


あたし達も体力や魔力を消耗することなく、丸太の矢で大半の魔物がいっきに串刺し状態になったのだ。


正直、自分たちが反対にこの罠にやられる立場でなくて良かったと思った。


最後に退路を断つための氷壁を作る時に、アリシアの甲高い笑い声が聞こえてきた気がしたが、気の所為だと思うことにした。

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