第165話 ◆テレポーテ-ション

◆テレポーテ-ション


ヤバイ! モッフルダフが戻って来ちゃったみたい。


ど、どうしよう、ニーナ。


しっ!  ママ、こっちよっ!


ニ-ナが、船長室の寝室へ隠れるように手招きをしている。


あたしは、急いで航海日誌を元の位置に戻し、寝室へ駆けこんだ。


カチャッ  キィーー


間一髪で、部屋のドアが開いてモッフルダフが入って来た。


スン スン  


おや? お客さんでも来てたのかな?


モッフルダフが部屋の中をクルリと見回す。


フン フン  こっちかな?


だんだん寝室の方へ近づいて来る気配が伝わって来る。


か、隠れるところは・・・


ベッドの下はゴミだらけだし、ロッカーも無いし・・


あ゛ーー もうダメだ。  あたしは覚悟を決めた。



ママ、あたしにしっかり掴まって!


えっ? なに?


突然ニーナにぎゅっとハグされた。


ムニューー


あぁ・・  わが娘はけっこう巨乳に育っていたのかぁ・・


そう感じた次の瞬間、あたしとニーナは自分たちの部屋に移動していた。


す、すごい。  これってテレポーテ-ションじゃない?


自分が一度行ったところなら、その場所をイメージすれば移動できます。


そうなんだ。  ニーナが女の子で良かったよ。


???


それに、心がきれいでね。


ママが言ってることがよく理解できません。


いや、ニーナは今のままでいてくれればOKっていうことよ。


・・・


ピンチは脱出できたけど、あの航海日誌は何とかしなければならないぞ!


ページを破るのは不自然だし、インクで書かれているので消せないし・・・


5日分全部破って書き換えるのは筆跡でバレちゃうし・・・


う~ん。  マジで良いアイデアが浮かばん!



ちょっとコリン君待ちなさい!


嫌ですってば!  もう勘弁してくださいよ。



あ~  またアリシアがイジメてる。


早く何とかしてあげないとなあ。


んっ?  そうだ!


ニーナ、アリシアの記憶だけ消すのってできる?


はい。


それじゃ、アリシアの記憶を5日分だけ消しちゃってくれるかな。


わかりました。


・・・


ニーナがアリシアの後を追って部屋から出て行ってから5分が過ぎたころ、アリシアが首を傾げながら部屋に入って来た。


セレネ、こっちに来て。


此処に座りなさい!


あ~ ハイハイ。


ちょっと疲れたみたいなの。  膝枕しなさい。


ふふっ


何が可笑しいの?  早くしないと怒るわよ!


はいっ、どうぞ♪


眠くなるように頭も撫でなさい。


はい はい。


アリシアには5日分の記憶消去の代価として、今日はおとなしく言う事を聞いてあげよう。


これで、船内は少し静かになるし、コリン君もきっと早く立ち直れることだろう。

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