第159話 ◆そうするしかないっちゃない?
◆そうするしかないっちゃない?
次の日、朝早くにあたしは学校の裏山へ向かった。
朝早いのは、あたしが着ている服はこちらの世界では、奇抜に見えて恥ずかしいからだ。
だからなるべくなら、他の人に会いたくなかった。
それこそ、警察官に見つかったら職質、補導の流れになるかもしれない。
そうなったら、なんとも説明のしようがないし、仮に詳しく説明でもしたら病院送りになるだろう。
こちらの世界と向こうの世界の接点は、今のところ学校の裏山しか思いつかない。
まりあ先輩が向こうの世界に飛ばされたのは、学校の裏山で居眠りをした後だったし、あたしがこっちで目覚めたのも同じ場所だからだ。
あの場所には、二つの世界をつなぐ何かがきっと存在するに違いない。
しかし、そう都合よくその機会に巡り合えるだろうか?
でも、今のあたしには、それに賭けるしかなかった。
まりあ先輩が学校に通っていた当時には、此処に見晴らし台があったらしいが今は何もない。
先輩は授業をエスケープすると、よく此処に来て昼寝をしていたそうだ。
あたしはというと裏山は春になると桜が満開になるので、お弁当を持ってお花見に来たことが1度だけあっただけだ。
虫が大の苦手のあたしは、あまり木や草が多く生えているところは避けている。
昨日一晩過ごした公園でも、大きな蛾が飛んで来て真夜中にひとりで大騒ぎしてしまった。
場所はここしかないが、向こうの世界と行き来するのには、何か発動するきっかけがあるはずだ。
それは、ここで眠って目が覚めた時に起きるか、向こうから来た時のように高いところから落下したりするかだろうか?
失敗して痛いのは極力避けたいので、まずはこの場所で眠ってみることにする。
幸いなことに昨日はよく眠れなかったので、もう少し陽が射してきて暖かくなったら、ぐっすり眠れる自信はある。
それで駄目なら命を懸けて、桜の木に登って頭から落ちてみればいいだろう。
今の自分の気持ちとしては、向こうに戻れないなら死んだ方がマシくらいまでになっている。
葵さんならきっと、「そうするしかないっちゃない?」っていうだろう。
ふぁ~
暖かくなるのを待つことも無く、大あくびが出る。
よしっ 寝るぞ!
草原を足で踏み馴らし、寝るスペースを作ってそこに横になる。
今日も快晴だ。
目を瞑ると直ぐに睡魔が襲って来る。
みんな待ってて。 直ぐに戻るからね。
ポタッ
んっ? ポタッ?
せっかく眠る直前までいったのにとブツブツ言いながら、眠い眼まなこをゆっくり開く。
ぎゃーーー 毛虫ーーーーー!!
いやーーーーっ!
朝早く、裏山にあたしの絶叫が響き渡る。
んもう! この絶叫で向こうの世界に行けたら良かったのにぃーー・・・
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