第147話 ◆一生ものなの?

◆一生ものなの?


あ、あのっ!  ぼ・・僕も一緒に連れてってくれませんか?  


へっ?


ウエイトレス姿のコリン君の表情は真剣だ。


なんで、そんなに一緒に行きたいの?


だって、この町は何にもなくて、もう退屈で死にそうなんです。


おまけに、こんな格好で嫌々バイトでこき使われるし。  もう逃げ出したくなる僕の気持ち、お姉さんにも分かるでしょ?


なるほどね。  分からないでもないけど、ご両親がいいっていうかしら?


あたし達って、商売だけじゃなくてトレジャーハンターとかもするし、もう何度も命を失くすような目に遭ってるんだよ。



大丈夫です。  父は何とか説得します。


あと、自分の身を守るくらいなら楽勝です。


そう言って、コリン君は自分の掌に、小さな光る球体を作り出して見せた。


あなた、魔法が使えるの?


母がエルフでした。


でしたって・・


2年前に病気で亡くなったんです。


そうだったの。  でも、それなら尚更お父様がお許しにならないでしょ。



心配しなくても大丈夫です。  いま、彼女がいますから。


僕がいたら気を使って、再婚だってできないでしょ?  


・・・



よしっ、わかったわ。  お父様のお許しが出たなら、連れてってあげる。


だけど、10日後には出航するわよ。 それまでに説得できなかったら諦めてね。


わかりました。  必ず説得して見せます。


コリン君は、小さくガッツポーズをして、厨房に戻って行った。



・・・


港の乾ドックでは、船のメンテナンスが順調に進んでいた。


モッフルダフ達は、既に商品の仕入れを終えて、あとは船のメンテナンスが終わるのを待っている状態だ。


あたし達の分も見込んで仕入れているので、この港であたし達が売る商品を探す必要はない。


ちなみに、モッフルダフ達は船の部品(帆とか舵輪など)や山の斜面で採れるナッツ類なんかを仕入れたようだった。


そして、メンテナンスが終わった日の夜、コリン君がお父さんと一緒に尋ねて来た。



どうも、娘がご迷惑をおかけしたようで、すいません。


行き成りお父さんの謝罪から会話が始まる。


ちょっと、僕は男だから息子って言えよ!


ふふふっ  それじゃあ、その恰好はなんだ?


こ、これは・・・


コリン君は、ひらひらのワンピ姿で、確かに可愛い女の子にしか見えない。


えっ?  どっち?


そういえば、あたしの友達の女の子にも自分の事をボクって言う娘がいたっけ。



コリン君は、結局お父様を説得できなかったってことね?


いいえ、わたしは息子の願いを聞き入れないほど頑固なオヤジではありません。


コリン君も代わりに、お父さんから意外な言葉がでた。


それじゃ、お許しになられたんですか?


はい。


コリン君、よかったじゃない。


コリン君の方を見ると体が小刻みに震えている。


どうしたの?


うわ~ん。  聞いてくださいよ。  許可の条件っていうのが、女装し続けるならっていうんです。


うわっ。  このオヤジえげつない条件を突きつけたのかぁ・・  こりゃ無理だな。


そう・・ それでは、この話しは無かったことに・・・



いやいや、息子は条件を飲んだので、ご迷惑でしょうけど一つよろしくお願いします。


お父さんは深々とお辞儀をする。


コリン君、ほんとうにそれでいいの?


いいです!  てか、もう条件を守るための契約の儀式をしちゃいましたから・・・



な、なんですって!!


突然アリシアが大声をあげたので、びっくりした。


そんなことしたら、一生・・・


えっ?  儀式ってなにを・・


誓いを立てる際のエルフの決意の契約です。  この契約は解除できません。


アリシアは、ボソボソ言いながら、ゴミを見るような目でコリン君を見ている。



いやー 本当に誓いの言葉を言うとは思わなかったので、ここまで本気だとは気がつきませんでした。


止めようと思った時には、もう手遅れでした。


うわ~ どっちもクズじゃないか・・・


なんだか、ヤバイ親子にかかわってしまったよ。  トホホ・・・

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